脂漏性皮膚炎は、皮膚表面に赤みや黄色い瘡蓋(かさぶた)がうろこ状にできる皮膚炎です。症状が顔の目立つ場所にできるため、心理的につらい状態になる方も多くいらっしゃいます。
幼児の場合は自然治癒しますが、成人の場合は生活環境の様々な要因が影響しています。治療が長期化することがあり、この疾患の難しい側面です。
今回は、脂漏性皮膚炎を紹介していきます。
※この記事はメディカルドックにて『「脂漏性皮膚炎」を発症すると現れる症状・予防法はご存知ですか?医師が監修!』と題して公開した記事を再編集して配信している記事となります。

監修医師:
竹内 想(名古屋大学医学部附属病院)
名古屋大学医学部附属病院にて勤務。国立大学医学部を卒業後、市中病院にて内科・救急・在宅診療など含めた診療経験を積む。専門領域は専門は皮膚・美容皮膚、一般内科・形成外科・美容外科にも知見。
脂漏性皮膚炎の予防方法と再発の恐れ

日常生活で予防ができる病気なのですね。
日常生活の中で皮脂の過剰分泌とマセラチア菌を少なくするための工夫としては、以下の様なことがあげられます。皮脂が分泌する部分を清潔に保つ
皮脂分泌を増加させる食品の摂取を控える
ビタミンB2・B6・Cを含む食品を積極的にとる
生活リズムを整える
皮脂の多く分泌する脂漏部位を清潔にします。手で強くこすると、皮膚のバリアである皮脂膜が傷ついて、肌の潤いを損なってかさついてしまいます。
適切な洗い方は、石鹸を泡立てて泡で優しく洗うことです。また、皮脂分泌を減らすためには食生活も大切です。
皮脂は中性脂肪からできています。中性脂肪を多く含む食品といえば、動物性脂肪の多い食品である、肉・バター・チーズなどの飽和脂肪酸を含む食品などがあります。飽和脂肪酸は血中の中性脂肪をあげ、悪玉コレステロールも増加させるため過剰摂取には注意が必要です。
一方で、皮脂の分泌をコントロールしてくれる食品は積極的に取り入れたいところです。ビタミンB2は皮脂の分泌を調整し、粘膜を保持してくれます。ビタミンB6はビタミンB2の働きを助けます。ビタミンB2・B6を多く含む食品はレバー・豚肉・魚などです。
ビタミンCは、皮脂の分泌過剰を抑制して皮膚の酸化による肌へのダメージを軽減させます。その他、ホルモンバランスと肌の調子は密接に関係があるため、睡眠をしっかりとって身体を休めることも大切です。生理前にニキビができやすいことなどにもみられるように、皮脂はホルモンの影響を大きく受けています。
睡眠をしっかりとって身体を休めることが特に効果的ですので、生活リズムを整えましょう。
完治したあと、再発の恐れはあるのでしょうか。
ステロイド外用薬で炎症自体を治すことはできますが、1週間程で再発することも多く、慢性化する傾向にあります。ストレスが強くなったり、冬の乾燥で肌荒れを起こしたり、様々な外的要因によって再発してしまうため、中には数十年も患い続けるケースもあります。慢性化した場合は、克服には年単位に渡る日々の継続的なスキンケアが必要です。
再発した場合は、長期的な目線で症状の改善と向き合うことが求められます。
最後に、読者へメッセージをお願いします。
脂漏性皮膚炎は、明確な原因はわかっておらず、再発もよくみられます。長期的に向き合わねばならない場合もあるでしょう。気がついたら早期に受診し、医師に相談することが大切です。そして、生活習慣の中で、どの様な状況で皮膚炎が発生するのかを、みつける道筋を立てましょう。その人によって、皮膚炎が発症する要因は様々です。生理の前後などホルモンバランスを崩すタイミングで発症する場合もあれば、温度の変化で発症する場合もあります。まずは、皮膚を清潔に保ち、保湿をする習慣を日々の生活に取り入れるように心がけましょう。
食事の面においては、動物性脂肪の多い偏った食事の見直しと、ビタミン豊富なバランスのとれた食事を意識し、日常生活の見直しをして生活リズムを整えましょう。
編集部まとめ

脂漏性皮膚炎はシャンプー荒れや乾燥肌との区別がつかずに、中々気がつかないこともあります。
気がついた場合は早期に対策を取ることが肝心です。
生活リズムや食生活の乱れをみつめ直して改善する、また、ストレスを軽減すること自体が、現実的には大変で難しいことかもしれません。
しかし、中長期的にみて、毎日できることから一つずつやってみることが大切です。
脂漏性皮膚炎の治療は、薬より養生という言葉にもあるように、普段からの予防の心がけこそに、最善の良薬が存在しているといえます。
毎日の予防策に費やす努力は、薬の効果よりも絶大な効果が得られるのです。
参考文献
脂漏性皮膚炎-臨床症状と各種外用剤の治療効果-
脂漏性皮膚炎を繰り返す患者のケアを試みて

