失う歯の本数が増えるにつれ、「インプラント」と「入れ歯」のどちらの治療法が自分にとって最適か、迷う人も多いのではないでしょうか。とくに、シニア世代は見た目や使用感はもちろんのこと、長期的な予後や将来の健康状態をふまえた選択が重要となります。今回は、インプラントと入れ歯それぞれの治療の特徴や使用感、費用・治療期間の違いについて、「浜松歯科」の中野先生に解説していただきました。

監修歯科医師:
中野 陽平(浜松歯科)
鹿児島大学卒業。鹿児島大学医学部・歯学部附属病院歯科診療部門、鹿児島市立病院歯科・歯科口腔外科などで経験を積む。現在は「浜松歯科」の理事長として、インプラント、矯正、根管治療など各分野の専門性を発揮し、複数の歯科医師と連携を図りながら幅広い治療を提供している。
編集部
インプラントと入れ歯、それぞれの特徴や使用感を教えてください。
中野先生
インプラントは人工の歯根を顎の骨に直接埋め込み、その上に人工の歯を被せる治療法です。骨にしっかり固定されるため、自分の歯に近い感覚で噛むことができます。その一方、入れ歯は歯を失った部分に装着する取り外し可能な人工の歯で、治療が比較的簡単で外科手術の必要もありません。ただし、装着感や噛む力、話しやすさはインプラントに劣ります。実際に、入れ歯で噛む力は天然歯の3割程度と言われています。
編集部
噛み心地や装着感は、インプラントの方が優れているのですね。
中野先生
はい。しっかりと噛めるインプラントは食事面のメリットだけでなく、近年は認知症の予防効果も期待できます。臨床の現場においても、入れ歯を長期間使用している人は、認知症のリスクが高まる傾向が統計的にも確認されています。ただ、保険適用の入れ歯だと「安く作れる」というのも特徴の1つなので、コスト面の恩恵は大きいと思います。
編集部
実際に、インプラントと入れ歯では、費用面でどのくらいの違いがあるのでしょうか?
中野先生
インプラントは自費診療となるため、1本あたり30~50万円程度が一般的な相場となります。これに対して、入れ歯は保険適用の場合だと、部分入れ歯で5000~1万5000円前後、総入れ歯で1万5000円前後(3割負担)です。ただし、入れ歯は定期的な作り直しが必要なため、長い目で見たトータルコストも考慮しなければなりません。より高品質な自費の入れ歯という選択肢もありますが、個人的には同程度の費用をかけるのであればインプラントをおすすめしたいところです。ただ、費用面だけで見れば保険の入れ歯も魅力的な選択肢だと思います。
編集部
治療期間についてはいかがでしょうか? 両者で違いはありますか?
中野先生
治療期間は患者さんの状態や治療法によって異なりますが、インプラントの場合は3カ月から最長で9カ月かかります。一方、入れ歯は最短で1カ月程度と、インプラントと比べて短い時間で治療を終えることができます。
※この記事はMedical DOCにて<入れ歯orインプラントどっちがいいの? それぞれの特徴やメリット・デメリットを歯科医が解説!>と題して公開した記事を再編集して配信しており、内容はその取材時のものです。
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