眼科医が眼鏡をかけていると、「えっ、プロなのに!?」と思ってしまう人もいるのではないでしょうか? 今回は眼鏡の先生から眼鏡以外の治療を受けても大丈夫か、栗原大智先生に聞いてみました。

監修医師:
栗原 大智(医師)
2017年、横浜市立大学医学部卒業。済生会横浜市南部病院にて初期研修修了。2019年、横浜市立大学眼科学教室に入局。日々の診察の傍らライターとしても活動しており、m3や日経メディカルなどでも連載中。「視界の質=Quality of vision(QOV)」を下げないため、診察はもちろん、SNSなどを通じて眼科関連の情報発信の重要性を感じ、日々情報発信にも努めている。日本眼科学会専門医。
編集部
眼鏡の眼科医は、コンタクトレンズやそのほかの視力矯正や治療などよりも眼鏡を推奨しがちなのでしょうか?
栗原先生
眼科医が眼鏡を選ぶ理由は、必ずしも推奨する治療や矯正方法とは関係ありません。私だけでなく眼科医は、患者さんの目の状態やライフスタイルによって、視力矯正方法を選んでいます。もちろん、眼鏡は管理がほかと比べれば簡単ですし、破損以外で起こる合併症は基本的にありませんので、眼鏡で良ければそれに越したことはありません。しかし、中には強い乱視があり、ハードコンタクトレンズでなければ矯正が難しい方もいます。また、どうしても眼鏡が嫌で、裸眼での生活を希望される場合はコンタクトレンズやレーシックや目の中にレンズをいれICLなどが良いと思います。
編集部
人によって選択が変わってくるのですね。
栗原先生
はい。コンタクトレンズなら簡単に取り外しできますが、管理を適切に行わないと合併症が起こる恐れがあります。そのため、コンタクトレンズを希望される場合は管理が行えることが重要です。そういった管理がめんどうで、費用的に問題なければレーシックやICLをお勧めしています。ただし、どちらにもメリット・デメリットがあり、そもそも適した目というのもあります。例えば、私のような強度近視はレーシックではなく、ICLの方が良い適応となります。しかし、私は眼鏡で困っていないので眼鏡を使っています。
編集部
先生が眼鏡なのは「眼鏡が一番安全だから」ということではないですよね?
栗原先生
たしかに、私が眼鏡をしているのは安全性が一番高いという理由もありますが、それだけではありません。年齢とともに度数が変化したり、老眼などの症状が出たりします。眼鏡であればその変化に合わせて、レンズの度数を調整できるからです。もちろん、コンタクトレンズやレーシック、ICLなどの治療も安全性は高い視力矯正ですが、合併症が出ないとは言えません。眼鏡も合わなくなることはありますが、コンタクトレンズやレーシック、ICLなどをした後にトラブルになる患者さんもゼロではありません。稀にそういった患者さんを診ていると、“私は”眼鏡で良いかなという消去法的な選択になりました。
編集部
眼鏡やコンタクトレンズ、ICLなど、それぞれのメリット・デメリットを教えてください。
栗原先生
まず眼鏡についてですが、メリットは合併症がないことです。また、度数が変わったり、老眼の症状が出たりしても、眼鏡のレンズを変えれば良いこともメリットとして挙げられます。デメリットは破損と交換する手間です。子どもに踏まれたり、叩かれたりするとすぐに曲がってしまうので、調整のために眼鏡店に来店する手間はあります。また、度数が変更になれば交換する必要がありますし、その間は過去に作成した眼鏡などを使う必要があります。
編集部
コンタクトレンズの場合は?
栗原先生
コンタクトレンズのメリットは、目に直接乗せて視力を矯正するため、見え方が自然になることです。眼鏡はフレームが曲がると、見え方が悪くなる場合もありますが、コンタクトレンズはその心配がありません。デメリットは目の感染症やドライアイなどの症状が出ること、管理が面倒なことが挙げられます。特に、コンタクトレンズは使用後の管理が重要です。それを怠ると目の感染症やドライアイが出やすくなります。
編集部
レーシックはどうでしょう?
栗原先生
レーシックのメリットは、合併症として目の感染症が起こりにくいこと、裸眼で見えることです。レーシックは角膜を薄く削る治療のため、基本的には合併症は起こりにくいです。そして、裸眼で見えることが何よりの魅力でしょう。デメリットはドライアイが起こりやすく、元に戻せないことです。レーシックでは黒目を削るため、そこにある神経も併せて取り除くことになります。その結果、ドライアイが起こりやすくなるとされています。また、元の状態に戻すことはできないので、ドライアイが起こってしまっても元通りにすることができないのが課題です。
編集部
ICLについては?
栗原先生
ICLのメリットは、ドライアイが起こりにくいことと、再手術が可能なことです。ICLはもともと白内障手術で行われている方法と似ており、安全性が確立された手術方法を用いています。また、ICLは角膜を削ることはほとんどないので、ドライアイも起こりにくいとされています。そして、ICLは目にレンズを入れているので、それを交換することで見え方の調整が可能です。もちろん、何度も再手術をすると合併症の頻度が増えるので、基本的には手術は1回しかしません。ICLのデメリットは白内障の進行と目の感染症です。水晶体の近くにICLを置くため、その接触により白内障が進行するのではないかと懸念されています。また、目の中で手術をするため、眼内炎という感染症のリスクがあり、大きく視力を下げてしまう恐れがあることもデメリットとして挙げさせてもらいます。
※この記事はMedical DOCにて<「眼科医なのにメガネってどういうこと?」 信用して大丈夫なのか直接聞いてみた>と題して公開した記事を再編集して配信しており、内容はその取材時のものです。
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