相次ぐクマの襲撃で「犬をしまえ」が話題に 愛犬の「外飼い」は法的に問題ない?

相次ぐクマの襲撃で「犬をしまえ」が話題に 愛犬の「外飼い」は法的に問題ない?

SNSで「#犬をしまえ」というハッシュタグが議論を呼んでいます。きっかけは東北地方で飼い犬がクマによって殺されたり、危害を加えられたりする事件が相次いで報じられたこと。

これまでも台風や猛暑、厳寒などの過酷な気象条件下でも犬を屋外で飼育し続けることへの批判の声が度々上がってきました。犬は原則として屋内で家族として暮らすべきだ、という考えも広がっているように見えます。

かつて犬は「番犬」として屋外で飼育される(いわゆる「外飼い」)のが一般的でしたが、近年は「家族の一員」として室内で共に暮らすスタイルが主流となりつつあります。

こうした社会的な意識の変化の中で、「犬をしまえ」の声が高まったようです。では屋外で飼育することは、法的にどのように扱われるのでしょうか。現行法で「外飼い」がどのような場合に違法となり得るのか検討します。

●「犬を屋内で飼え」と命じる法律はない

まず結論から言えば、現在、日本の法律や多くの自治体の条例において、「犬を飼育する場所は屋内でなければならない」と直接的かつ一義的に定めた規定は存在しません。

日本の動物愛護の根幹をなすのは「動物の愛護及び管理に関する法律」(以下、動物愛護管理法)です。この法律は、飼い主に「適正飼養」の義務を課していますが、その飼育場所を「屋内」に限定するものではありません。

したがって、「外飼い」をしているという事実だけで、直ちに違法となるわけではありません。

●「外飼い」が違法となる境界線

では、どんな場合でも「外飼い」は法的に問題ないのでしょうか。

動物愛護管理法が定めているのは飼育場所の指定ではなく、「動物の愛護及び管理に関する責任を十分に自覚して、その動物をその種類、習性等に応じて適正に飼養し、又は保管することにより、動物の健康及び安全を保持するように努めるとともに、動物が人の生命、身体若しくは財産に害を加え、生活環境の保全上の支障を生じさせ、又は人に迷惑を及ぼすことのないように努めなければならない」という飼い主の責務(動物愛護管理法 第7条)です。

この責務を果たしていない、すなわち「適正飼養」の基準を著しく下回る飼育方法は、「虐待」または「ネグレクト(飼養放棄)」として違法性を問われる可能性があります。

では「外飼い」は本当に虐待やネグレクトに該当するのでしょうか。まず、一般的なネグレクトの類型を確認し、その後に今回のクマの事例を検討してみます。

1)ネグレクトの一般的な類型

動物愛護管理法 第44条は、愛護動物をみだりに殺し、傷つけることだけでなく、「給餌若しくは給水(えさや水を与えること)をやめ、酷使し、又はその健康及び安全を保持することが困難な場所に拘束することにより衰弱させること」も「虐待」として禁止しています。

これはいわゆる「ネグレクト」と呼ばれる行為です。具体的に「外飼い」において問題となり得るのは、以下のようなケースです。

過酷な気象条件での放置: 猛暑日に直射日光が当たる場所に係留し、日陰や十分な水がない場合(熱中症のリスク)。また、台風や豪雨、厳寒の日に、風雨や寒さをしのげる適切な小屋(犬舎)がないまま放置すること。これらは犬の健康と安全を著しく脅かす行為であり、ネグレクトに該当する可能性が極めて高いと言えます。

不衛生な環境: 排泄物が長期間放置され、不衛生な環境で飼育すること。

不適切な係留: 極端に短い鎖でつなぎ、犬が自由に動いたり、水や餌にアクセスしたりできない状態にすること。

適切な給餌・給水の欠如: 日常的に十分な量と質の食事が与えられていなかったり、新鮮な水が飲める状態になっていなかったりすること。

これらの行為が確認され、動物が衰弱しているような場合、飼い主は動物愛護管理法違反(ネグレクト)に問われ、刑事罰(1年以下の懲役または100万円以下の罰金)の対象となる可能性があります。

2)クマの襲撃リスクがある場合、外飼いはネグレクトになるか

SNSで「#犬をしまえ」という声が高まったのは、猛暑やクマなど野生動物に犬が危害を加えられる現実的な危険が生じてしまっているためです。

しかし、犬を室内で飼うことが非常にまれな地域はいくらでもあります。それらの地域でクマが出没するリスクがある場合、全ての外飼いがネグレクトになるわけではありません。

法は、飼い主が最低限果たすべき動物の安全の保持すら怠ったような場合を処罰する趣旨です。そこで、ネグレクトにあたるかどうかは、以下のような要素を総合的に考慮して判断する必要があると考えられます。

ア)クマの出没により犬が襲われる具体的な危険性がどの程度高かったのか

イ)その危険をどの程度飼い主が予見できたのか

ウ)飼い主が安全確保のためにどの程度の努力をしたのか

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