「なんだか耳が痛い」「耳が詰まった感じがする」「聞こえにくい気がする」といった症状はありませんか？これらは、多くの方が経験する可能性のある中耳炎のサインかもしれません。
中耳炎は、お子さんだけでなく大人もかかる病気であり、放置すると症状が悪化したり、慢性化したりする恐れもあります。
本記事では中耳炎の症状について以下の点を中心にご紹介します。
中耳炎とは
中耳炎の症状
中耳炎の治療
中耳炎の症状について理解するためにもご参考いただけますと幸いです。
ぜひ最後までお読みください。
監修医師：
林 良典（医師）
消化器内科
呼吸器内科
皮膚科
整形外科
眼科
循環器内科
脳神経内科
眼科（角膜外来）
中耳炎の概要
中耳炎とはどのような病気ですか？
中耳炎とは、耳の鼓膜の奥に位置する中耳に炎症が生じる病気を総称したものです。なかでも小さな子どもがかかりやすい急性中耳炎とされていますが、それ以外にも滲出性中耳炎や慢性中耳炎、好酸球性中耳炎といった種類があります。
それぞれのタイプによって原因や症状、治療法は異なります。例えば、急性中耳炎では強い耳の痛みや発熱、耳だれが見られ、細菌やウイルスが原因で急速に炎症が進行します。一方、滲出性中耳炎は痛みが少ない代わりに、耳の聞こえづらさが長く続くことが特徴です。
中耳と鼻の関係を教えてください
耳と鼻は一見無関係に思えますが、実は中耳と鼻の奥は耳管（じかん）と呼ばれる細い管でつながっています。この耳管は、中耳と喉の奥（上咽頭）をつなぐ通路で、鼓膜の内外の気圧を調整する働きを担っています。
通常、耳管は閉じていますが、あくびや飲み込み動作の際に一時的に開き、空気の通り道になります。風邪やアレルギーなどで鼻や喉の粘膜が腫れると、耳管が閉塞しやすくなり、中耳に空気が入りにくくなります。
この状態が続くと中耳の内部に陰圧が生じ、そこに鼻から細菌やウイルスが耳管を通じて入り込み、炎症を起こして中耳炎を引き起こします。
なかでも子どもは耳管が短く角度が浅いため、鼻から中耳への病原体の移動が起こりやすいのです。このように、中耳と鼻は密接な関係にあり、鼻の健康が耳の健康にも直結しているのです。
大人も中耳炎にかかりますか？
中耳炎は大人でも発症することがあります。大人の中耳炎は、風邪やアレルギー性鼻炎などで鼻や喉の状態が悪化したときに起こることが多いとされ、耳管を通じて病原体が中耳に侵入し、炎症を引き起こします。
また、飛行機の離着陸時に生じる気圧の変化によって耳の内部の圧が調整できずに生じる航空性中耳炎や、水泳やダイビングなどによる水圧変化に伴う炎症も、大人に見られるケースです。
なかでも、耳ぬき（耳管を通じて空気を調整する働き）がうまくいかない場合には、鼓膜に強い圧力がかかり、痛みや出血を伴うこともあります。
中耳炎の種類と症状・原因
急性中耳炎の症状と原因を教えてください
急性中耳炎は、主に風邪を引いた後に鼻や喉の炎症が中耳に波及し、炎症を起こす病気です。
主な症状は突然起こる耳の痛みで、子どもでは夜間に激しく泣くなどして異変に気付くことが多いようです。発熱や耳だれ（中耳の膿が鼓膜を破って出る）を伴うこともあり、膿が出ることで一時的に痛みが軽減することもあります。
また、耳がつまった感じや聞こえにくさもよく見られます。鼓膜は赤く腫れ上がっていることが多く、耳鏡での観察によって診断されます。
主な原因は、風邪による鼻水や咽頭炎などの感染症が耳管を通じて中耳に波及することです。耳の外からの汚れや水によって起こることはまれで、鼻や喉からの感染が発端となる傾向があります。
乳幼児では免疫力の未発達や集団生活なども発症リスクを高めるため、発熱や耳の異常を訴えた場合は、早めの受診が重要です。
滲出性中耳炎の症状と原因を教えてください
滲出性中耳炎とは、中耳腔に滲出液と呼ばれる液体がたまり続ける病気で、急性中耳炎のような痛みや発熱がほとんどないといわれているため、気付かれにくいのが特徴です。なかでも子どもは異変を訴えにくいため、保護者が「テレビの音を大きくする」「呼んでも反応がない」といった日常の変化に注意することが大切です。
症状は主に、軽度から中等度の難聴、耳がつまったような感覚（耳閉感）、自身の声が響く感じなどです。耳栓をしているような感覚や、水の音が聞こえると表現されることもあります。
主な原因は、急性中耳炎の治療が不完全で、滲出液が中耳に残ってしまい、耳管機能が不十分なまま液体が排出されずにとどまることで発症します。アレルギー性鼻炎や副鼻腔炎、アデノイド肥大による耳管の閉塞も発症因子です。
子どもだけでなく高齢者でも耳管の機能低下により起こることがあり、慢性化すると手術が必要となる場合もあるため、早期診断と適切な治療が重要です。
慢性中耳炎の症状と原因を教えてください
慢性中耳炎とは、急性中耳炎や滲出性中耳炎が長期化し、鼓膜に空いた穴が自然に塞がらず持続することで起こる中耳の炎症性疾患です。炎症が慢性化することで、耳のなかに病原菌が繰り返し感染し、耳だれ（耳漏）を何度も繰り返すようになります。耳だれは症状の程度により、常に出ていることもあれば、気付かない程度の少量の場合もあります。
症状としては、耳だれとともに難聴が中心です。進行したケースでは真珠腫性中耳炎と呼ばれ、鼓膜の一部が内側にめり込み、白い塊（真珠腫）を形成します。これが周囲の骨を破壊し、顔面神経麻痺やめまいなど重篤な症状を引き起こすこともあります。
慢性中耳炎の原因は、急性中耳炎が適切に治療されず慢性化したり、耳管機能が不良で中耳の換気がうまくいかない状態が長期間続くことです。再発を繰り返すうちに鼓膜が劣化し、穴がふさがらなくなるケースがみられます。
