さまざまな精神疾患が解明されていくなかで、「境界性パーソナリティ障害」という言葉を耳にすることがあります。
「境界性パーソナリティ障害ってどんな病気?」と詳しく知りたい方に向けて、境界性パーソナリティ障害の治療法について解説します。
※この記事はメディカルドックにて『「境界性パーソナリティ障害」とは?特徴についても詳しく解説!』と題して公開した記事を再編集して配信している記事となります。

監修医師:
工藤 孝文(工藤内科)
日本内科学会・日本糖尿病学会・日本肥満学会・日本東洋医学会・日本抗加齢医学会・日本女性医学学会・日本高血圧学会、日本甲状腺学会・日本遠隔医療学会・小児慢性疾病指定医。
境界性パーソナリティ障害の治療

治療を受けるには何科を受診したら良いですか?
精神科もしくは心療内科で診断ができます。
いきなり病院を受診することに抵抗がある方は「精神保健福祉センター・保健所」「こころの健康相談統一ダイヤル」などの相談窓口に相談するという方法もあります。
受診前にすべきことはありますか?
食事や睡眠などの生活習慣を整えて、アルコールを摂取する習慣がある方は控えることをおすすめします。アルコールは心のブレーキを緩めて衝動を抑える力が鈍くなる可能性があるからです。
自傷行為に及んだことがあるもしくは及ぶ危険性がある方は、家族やまわりの人に頼んで危険物を管理しておいてもらいましょう。
受診前に危険な状態になった場合の対処法を教えてください。
深刻な自傷行為や自殺未遂行為があった場合には、直ちに救急車を呼びましょう。
たとえば出血が止まらないような自傷行為や薬のまとめ飲みなどです。
衝動的にこのような行為に及びそうになったときには、相談できる人や機関があればすぐに相談しましょう。
どんな治療が必要になりますか?
精神療法が中心の治療となります。まずは自分の考え方や行動を自己認識するところから始めて、問題となる行動を理解します。
問題行動の対処を見つけて積み重ねていくことで改善が見込める病気です。精神療法を受けたからといってすぐに改善するものではなく、ゆっくりと紐をほどくようにして治療を続けていきます。
他の症状を併発している場合や医師が必要と判断した場合には、補助療法として薬物療法が適用される場合があります。
そうなんですね。治療の副作用はありますか?
境界性パーソナリティ障害で用いられる薬は主に気分を安定させる薬・抗精神病薬・抑うつ薬です。
抗精神病薬には体重増加や高血圧・血糖値の上昇がみられる場合があります。
抑うつ薬は初期に吐き気や下痢・頭痛などの症状が出ることがあります。
最後に、読者へメッセージがあればお願いします。
境界性パーソナリティ障害を抱えている方は対人関係のトラブルが起きやすいため、仕事や学校生活を送ることに難しさを感じている場合があります。
衝動が抑えられずに怒りをぶつけたり衝動的な行動に走ったりした後に、罪悪感から自分を責めてしまう方もいます。罪悪感や自分を責める気持ちが病状をさらに悪化させることがあるため、注意が必要です。
「生きづらさ」を感じることがある方は1度専門科を受診してみることをおすすめします。
編集部まとめ

境界性パーソナリティ障害とは「孤独になりたくない」という恐れからくる怒りや衝動・精神の不安定さのことです。
人格障害といわれることもありますが、精神療法を続けていけば症状の改善が期待できます。
「境界性パーソナリティ障害を抱えている」と認識することで、治療への一歩が踏み出せるのかもしれません。
まずは精神科や心療内科などの専門家に相談をしてみましょう。
参考文献
境界性パーソナリティ障害(BPD)|MSDマニュアル 家庭版
境界性パーソナリティ障害(BPD)|MSDマニュアル プロフェッショナル版

