コブスタンのロックアート(岩絵)
コブスタンの岩山に描かれたロックアートの数は60万点以上が確認されています。コーカサス地域における先史時代の生活や信仰、社会構造を伝えています。岩絵の描かれた年代は、およそ5,000年〜20,000年前に遡るとされています。日本では縄文時代にあたり、氷河が後退し始め地球全体的に気候が温暖となり、植物が繁茂して動物が増え、人間が狩猟で食物を得やすくなった時期と一致します。

ロックアートのモチーフ
コブスタンの岩絵には、狩猟や舞踊、宗教儀式、動物、船、星など、多様なモチーフが描かれており、当時の人々の生活や精神文化を生き生きと映し出しています。
狩猟や闘牛

宗教的な舞踏や儀式

小舟に乗る漕ぎ手
漕ぎ手が乗る小舟の描写は、古代の航海技術や交易の存在を示すものとして注目されています。

槍を持った戦士

ラクダの隊商

太陽や星々などの天体
石室の西壁を構成する岩石には卍(スワスティカ)の描写も含まれています。卍は古代の宗教的信仰と結び付けられ、太陽と火を象徴しています。さらに、3本の指を持つ擬人像や、ヤギのペトログリフも見られます。

人間や動物


これらの岩絵は、コーカサス地域における先史時代の文化や社会構造を理解するうえで、非常に貴重な資料となっています。主な岩絵には必ず説明パネルが併設されていますので、ぜひ歴史を感じながら読んでみられることをお勧めします。

こういった先史時代の岩絵の存在する場所は、現代では僻地に存在することが多く、訪ねるには難易度高いのですが、ここは首都バクーから近く行きやすいためか、比較的観光客の数も多いです。

この岩山は日差しを遮るものがなく、夏は相当暑いと思われます。夏に巡られる方は日傘必携。飲み物もお忘れなく。この眺望を楽しみつつ休憩できる屋根付きの休憩所も併設されていますので、休み休み見学しましょう。

ここから臨むカスピ海の景色がまた素晴らしいです。太古の昔の人々が、ここに立ち現代の私たちと同じ風景を眺めていたかもしれないと考えると、それだけでグッと来るものがありました。

これはヒエログリフではありません。蛇に注意です。

因みに、トイレもロックアート風です。

この岩絵と景観は、過去と現在をつなぐ貴重な証として、今も多くの研究者や観光客を魅了し続けています。
【スポット情報】コブスタン国立保護区コブスタンの泥火山
ゴブスタンには、地球上に存在する約700の泥火山のうち、約400が集中していると推定されています。泥火山は、地下の泥が断層などの割れ目を通じて地表に噴出する現象で、地質学的にも非常に珍しいものです。約20年に一度の周期で活動すると言われ、2001年にはバクー近郊の泥火山が15メートルもの炎を吹き上げました。

このような地質現象は、古代の拝火教(ゾロアスター教)の誕生にも関係していると考えられており、宗教的・文化的な背景とも深く結びついています。

また、薬効や美肌に効果があるとされ地元民にも親しまれています。微量のメタンガスを発生させているので、火を点けるとボッと燃えますよ。

このように、今は小さな泥火山でも月日を経てここまで大きくなります。


尚、泥火山の周辺はアチコチで小さな火山を形成しているため舗装された道路はありません。

ところどころぬかるんでいることから、タイヤを取られることもあり大型車での訪問は避けた方が無難です。ツアーで行くとこのようなレトロな車に途中で乗り換えて向かいます。


ゴブスタンは、単なる考古学的遺跡ではなく、先史時代から続く人類の創造性と自然との共生を象徴する場所です。
【スポット情報】コブスタン泥火山エリア