従姉妹との断絶、こぼれ落ちた言葉
祖母に婚約の話をして以降、私は職場で異動があり、これまで同様の忙しさに加えて環境にも変化が起きた。また、私たち家族と叔母家族の確執もさらに深まり、母と叔母の衝突はさらに激化。公私のストレスが重なった私は次第に、祖母の介護から足が遠のいていった。
そんな中で、久しぶりに1人で祖母の元を訪れた数日後、従姉妹の彩花から連絡が入った。嫌な予感がして、恐る恐る電話に出た。
「もしもし……どうした?」
「この前の週末って、美咲1人でおばあちゃん家に来てたんだって?」
「えっ、うん……」
「埃っぽかったんだけど、掃除したの?」
冷たく突き放すような語気で話す彩花に胸を痛めるも、その内容に心当たりはなかった。
「埃っぽかったらごめん。でも、掃除は毎回してるよ」
「はぁ……。ただでさえおばあちゃん、病気で身体弱ってるんだから、掃除ぐらいしっかりしてよね」
誠実な弁解にも、彩花は嫌味を吐くだけだった。これ以上の衝突は避けようと押し黙ると、彩花は祖母から聞いたのか、私の婚約の話を持ち出してきた。
「そういえば美咲、俊介さんと婚約したんだって?」
「えっ、あ、うん……」
「おばあちゃんも大変な時に……。随分とおめでたいよね。浮かれて掃除どころじゃなかったんじゃなくて?」
彩花の行き過ぎた、当てつけのような嫌味に私は絶句してしまった。その様子に彩花は満足したのか、「次からはちゃんとして」と吐き捨て電話を切った。
静寂が広がる部屋。かつて仲の良かった従姉妹の姿がぼやけ、深い孤独を感じる。私と彩花の間の亀裂は、もう私の歩み寄りだけでは埋められないほど深いものになっていた。
あとがき:祖母の笑顔と、従姉妹との断絶
祖母の笑顔を見たあの日のぬくもりは、今も胸の奥で光る。けれど、その温もりの裏で、確かにひとつの絆が崩れていきました。「大切にしたい人たちが、互いを傷つけてしまう」──そんな現実の前で、美咲はただ立ち尽くすことしかできません。それでも、祖母が見せてくれた笑顔が、美咲にとっての“家族の原点”であることに変わりありません。壊れてもなお、心のどこかで誰かを想い続けること。それが、美咲に残された祈りのようでした。
※このお話は、ママリに寄せられた体験談をもとに編集部が再構成しています。個人が特定されないよう、内容や表現を変更・編集しています。
記事作成: tenkyu_writing
(配信元: ママリ)

