「肺塞栓症の予防法」はご存知ですか?診断後の注意点も医師が解説!

「肺塞栓症の予防法」はご存知ですか?診断後の注意点も医師が解説!

肺塞栓症という病名は知らないけれど、「エコノミークラス症候群」なら聞いたことがあるという方も多いのではないでしょうか。

肺塞栓症はエコノミークラス症候群とも呼ばれることから飛行機の搭乗中に起こるものと認識されがちですが、実は自宅でも起こる可能性があります。

とくに、リモートワークなどで長時間同じ姿勢を続けている方は注意が必要です。

こちらで、肺塞栓症の予防法などについて詳しく解説していきます。

※この記事はメディカルドックにて『「肺塞栓症」の症状・原因・発症しやすい人の特徴はご存知ですか?医師が監修!』と題して公開した記事を再編集して配信している記事となります。

甲斐沼 孟

監修医師:
甲斐沼 孟(上場企業産業医)

大阪市立大学(現・大阪公立大学)医学部医学科卒業。大阪急性期・総合医療センター外科後期臨床研修医、大阪労災病院心臓血管外科後期臨床研修医、国立病院機構大阪医療センター心臓血管外科医員、大阪大学医学部附属病院心臓血管外科非常勤医師、大手前病院救急科医長。上場企業産業医。日本外科学会専門医、日本病院総合診療医学会認定医など。著書は「都市部二次救急1病院における高齢者救急医療の現状と今後の展望」「高齢化社会における大阪市中心部の二次救急1病院での救急医療の現状」「播種性血管内凝固症候群を合併した急性壊死性胆嚢炎に対してrTM投与および腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行し良好な経過を得た一例」など。

肺塞栓症の予防と注意点

水を飲む女性

肺塞栓症は完治するのでしょうか?

肺塞栓症は、重症の場合には比較的死亡率が高い病気だといえます。しかし欧米のデータによれば、未治療の状態では死亡率が30%程度と高いものの、しっかりと治療が行われている場合は2~8%と低いことが分かっています。
早期発見や早期治療によって死亡率が下げられるといえるでしょう。急性期を無事に乗り切れた場合には予後も良好だといわれているため、完治を目指すにはやはり早期に発見をして迅速に治療を開始することが重要です。

予防方法を教えてください。

肺塞栓症はエコノミークラス症候群という別名があることからも分かるように、狭い場所で足を動かしにくい状況で起こりやすくなります。そのため飛行機での旅行中だけではなく、車での長時間の移動や同じ姿勢でデスクワークを行う場合にも注意が必要です。
リモートワークなど1人で作業を行う場合、つい熱中して長時間席を立たずに作業を行うケースもあるでしょう。同じ姿勢を続けると血流が悪くなるため、デスクワーク時などは時間を決めて立ち上がるのがおすすめです。
室内を歩き回ったり、軽くストレッチをしたりするだけでも一定の効果があります。立ち上がるのが無理な場合は、足を上下に動かすとよいでしょう。
また水分不足でもリスクが高まる可能性があるため、こまめに水分を補給することも大事です。アルコールやコーヒーなどを摂りすぎると脱水になる危険があるため、長時間のフライトの時などにはなるべく控えるようにしましょう。
手術後や入院中などで肺塞栓症のリスクが高い方の場合には、病院の判断で運動療法や抗凝固療法などが行われることもあります。

肺塞栓症と診断された場合、日常生活での注意点はありますか?

肺塞栓症と診断され、症状が落ち着いた後も再発には注意する必要があります。
良くなってからも油断をしたり無理をしたりせず、再発の兆候がないか注意しながら過ごすことが大切です。長時間同じ姿勢を取り続けないようにして、血流が悪くならないように気を付けましょう。
食事や水分をしっかり摂ることも大事です。必要な水分は年齢や体型などによって異なりますが、1日に1リットル程度摂ることが理想的とされています。
また、下肢にむくみや痛みなどが出ている場合、血栓ができている可能性もあるため注意が必要です。血栓の予防には、弾性ストッキングの着用も効果的だとされています。ただし、これらは一般的な注意点です。
症状や重症度によっても取るべき対策は違ってくるため、日常生活の過ごし方や注意点を必ず医師に確認しておくようにしましょう。

最後に、読者へメッセージをお願いします。

肺塞栓症は重症になると命を落とすこともある怖い病気ですが、同じ姿勢を長時間続けることでリスクが高まるため誰にでも起こりうるといえます。
肺塞栓症が注目を集めたのは、震災時に車で寝泊まりしていた方たちが発症するケースが相次いだことでした。
近年ではリモートワークが増えていることもあり、自宅でも発症のリスクが高まったといえるのではないでしょうか。若い方でも発症する可能性がないとはいえないので、自分には関係ないことだと思わずに予防を心掛けてください。
時間を決めて足を動かすことが大事なので、運転中や仕事中にはこまめに休憩を取るようにして、軽いストレッチなどを行いましょう。

編集部まとめ

PCの前に座る女性
肺塞栓症は、発症すると急に呼吸困難や胸の痛みなどの症状が現れる病気です。

エコノミークラス症候群とも呼ばれるように長時間足を動かせない状況などでは誰でも発症する可能性があります。

また、妊娠中の方や血が固まりやすい体質の方も肺塞栓症が起こりやすいので注意が必要です。

飛行機の搭乗中・運転中・デスクワーク中などには足を定期的に動かすようにし、水分もこまめに摂って予防を心掛けてください。

参考文献

エコノミークラス症候群の予防のために(厚生労働省)

配信元: Medical DOC

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