「インプラント」と「ブリッジ」、失った歯の治療法として代表的なこの2つの治療法は、見た目や使用感、費用、治療期間などがそれぞれ異なります。費用が比較的安く、治療期間も短いという点で魅力的なブリッジ治療ですが、将来の歯の健康への影響を考えた場合、どちらの方がメリットは大きいのでしょうか。インプラントとブリッジ、自分にピッタリなのはどっちか、治療法を選ぶ際に考えておきたいことを、「浜松歯科」の中野先生に解説していただきました。

監修歯科医師:
中野 陽平(浜松歯科)
鹿児島大学卒業。鹿児島大学医学部・歯学部附属病院歯科診療部門、鹿児島市立病院歯科・歯科口腔外科などで経験を積む。現在は「浜松歯科」の理事長として、インプラント、矯正、根管治療など各分野の専門性を発揮し、複数の歯科医師と連携を図りながら幅広い治療を提供している。
編集部
インプラントとブリッジで治療法を選択する際、「歯を失った原因」がどのように関係してくるのでしょうか?
中野先生
例えば、歯に強い力がかかりすぎて抜歯に至った場合、ブリッジでは2本の歯で3本分の負担を支えることになるため、さらなる悪化を招くおそれがあります。また、むし歯や歯周病が原因で歯を失った場合は、治療後の再発リスクもしっかり考えることが重要です。歯を失う前と同じような習慣のままでは、どちらの治療法を選んだとしても、良好な予後を維持するのは難しくなります。したがって、まずは歯を失った原因をきちんと特定し、適切な対策を立ててから治療法を選択することが重要だと考えています。
編集部
年齢や健康面、歯の状態などによって、インプラントやブリッジの適応が変わることはありますか?
中野先生
いずれの治療法も年齢による制限はありませんが、適応に関してはそれぞれに注意点があります。まず、インプラントに関しては重度の糖尿病や骨粗しょう症など、全身の健康状態によっては治療が難しい場合があります。一方のブリッジに関しては、失った歯の位置や本数、また前後の歯の状態による制限があります。とくに、保険診療では失った歯の本数に応じた基準があり、これを満たさない場合は治療を選択することができません。
編集部
そのほかに、治療法の選択に際して考慮すべき点はありますか?
中野先生
ブリッジを選択する際は、「健康な歯を削ること」の判断をより慎重におこなう必要があります。私たち歯科医にとっても、健康な歯を削ることには抵抗があるので、治療を選択する際は、ご自身の健康な歯の価値について改めて考えていただきたいと思います。
編集部
健康な歯の価値についてどのように考えればよいのか、歯科医の立場から何かアドバイスはありますか?
中野先生
インプラントは30~50万円ほどの費用がかかりますが、健康な歯の価値を考えると、この費用は決して高額とは言えないというのが私たち専門家の見解です。つまり、インプラントでさえも、健康な歯の価値には及ばないわけです。このように考えると、健康な歯を削ることはやはり専門家として安易におすすめすることはできません。したがって、費用面だけでなく、歯の価値をしっかりと認識したうえで治療法を選択していただきたいと思います。
編集部
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
中野先生
歯を失う原因は一人ひとりで異なるので、一般的な治療の説明だけでなく、なぜご自身の歯が失われることになったのか、個々の要因をしっかり理解することが大切です。私たち歯科医はお口の中全体の状態から、歯を失った原因をある程度予測することができるので、まずはその原因について担当医とよく話し合ってみてください。そのうえで、ご自身の状況にあった最適な治療法を選んでいただければと思います。
※この記事はMedical DOCにて<歯を失ったときの対処法はご存じですか? ブリッジとインプラントの特徴を歯科医が徹底比較!>と題して公開した記事を再編集して配信しており、内容はその取材時のものです。
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