産休前日、えみこ以外の同僚が送別会を開いてくれました。自分を思う同僚の言葉に元気をもらったゆきえは、負の感情に囚われず、家族の幸せを守り抜くことを強く誓います。
送別会に感謝
産休に入る前日、職場で仲がいい人たちが送別ランチに連れて行ってくれました。
「ゆきえちゃん、体に気を付けてね」
「無事に産まれたら、赤ちゃん見せてね」
「無理しちゃだめ。しっかり休んで、たまには職場に遊びに来てね」
誰一人として私の年齢を口にしたり、皮肉を言う人はいなくて、プレゼントまで用意してくれていた。その温かさに、私は涙があふれそうでした。これまではえみこの言葉にびくびくするばかりで、優しい人たちの言動に気づくことができなかったのかもしれないと思うと後悔がつのります。
マタハラ同僚の過去
その送別会のランチの最後、1人の同僚がえみこのことで口を開きました。
「えみこさん、かなりゆきえさんに当たりが強かったでしょう?」
「え、ええ、まあ…」
急な話題にびっくりした私は、うまく言葉が出ませんでした。
「私が妊娠した時もああだったんだけどね、あとでえみこさんの同期に聞いたら、彼女はもともと妊活を頑張っていたみたいなの」
「え!?」
子どもなんていらないと大声で公言するようなえみこが?私は驚いて言葉が出ませんでした。
「事情はよくわからないけど、彼女は子どもを諦めてね。『子どもはいらないんだ』って周りに主張するようになったんだって」
深い事情はわからないし、知る必要もないと思うけれど、彼女の心には葛藤があったことが容易に想像できました。
「そうだったんですね…」
「だからといってあんな態度取って言いわけじゃないけど、こういう問題って複雑だよね」
聞くと、この同僚も同じようにえみこの態度に悩んだまま産休に入ったそう。今は復帰して元気に働いています。彼女の態度に引っ張られそうになることはあるけれど「自分と相手の問題は別」と割り切って、今は気にしないようにしているようです。
えみこのことで悩んでいるのは自分だけじゃなかったことに少しホッとしつつ、えみこの知らなかった一面には驚きました。えみこにはえみこなりの、葛藤があったのかもしれません。

