両親や義両親の理解も得た上で、友人の助けを借りモラハラ夫からの昼逃げに成功したミユ。しかしまだ、モラハラ夫と決着をつけるという大切な使命が残っていたのでした。
やはり追いかけてきったモラハラ夫
新しい生活が始まってから1週間が経ちました。ユカは新しい部屋にも慣れ、幼稚園にも元気に通っています。私もハルナの紹介で弁護士を見つけ、離婚調停の準備を進めていました。
その日の夕方、私はユカの幼稚園に迎えに行きました。ユカが友達と手を振り合って門を出た、まさにその時、見慣れた1台の車が幼稚園の前に止まり、ユウイチが降りてきたのです。私は一瞬、心臓が凍り付くような感覚を覚えました。ユウイチは、私とユカに気づくと、慌てた様子で近づいてきました。
「ミユ!どこに行ってたんだよ、心配してたんだぞ」
そして、人目もはばからず、その場で私に向かって深く頭を下げてきたのです。
「俺が悪かった。本当に悪かったから、頼む、家へ帰ってきてくれ」
その姿に、一瞬だけ心が揺らぎそうになりました。しかし、ハルナの助言を思い出して冷静になり、ユウイチに問いかけました。
「ねえ、具体的に何が悪かったか分かる?」
全然変わっていなかったモラハラ夫
その質問は、ユウイチにとって完全に予想外のものだった様子。突然姿を現せば、私が平謝りすると思い込んでいたのでしょう。ユウイチは顔を上げ、いら立ちの色を浮かべました。
「なんだよ、色々俺が文句言うのが気に食わなかったんだろ?謝ってるんだからさ…」
ユウイチの言葉には、「謝ったんだから、もう許せ」という傲慢な気持ちが透けて見えます。私の傷は「気に食わなかった」などという軽いものではありません。
「そうじゃないよね。あなたのバカにした態度、家事も育児もまったくしない姿勢、乱暴な物言い、全部私を傷つけてたよ。自分が何をしてたか覚えてないの?ねえ?」
私がわざと強く言うと、ユウイチは逆ギレして理性を失っていきました。これが彼の本当の姿なのです。
「うるさいな!お前が妊娠したから仕方なく結婚して、自由も金もなくなって、俺も疲れてたんだよ!謝ってるんだから蒸し返すんじゃねえよ、お前も謝れよ、おい!謝れ!」
その瞬間、私の心の中にあった最後の未練や情けは、完全に消え去りました。ユウイチは私たちを罵倒し、今にも手を出しそうな勢いです。私はすぐに携帯電話を取り出し、迷わず警察に通報しました。
「別居中の夫に待ち伏せされて、身の危険を感じます。すぐ来てください」
「おい、何言ってるんだ!」
ユウイチが私からスマホを奪おうとつかみかかろうとしましたが、送迎のほかの保護者が集まってきていて、誰かのパパに制止されていました。外面のいい夫にとって、他所の夫につかまえられるなんて恥ずかしさでいっぱいだったと思います。
「なあ、ちゃんと話し合おう。警察には間違いだったと言ってくれよ」
ユウイチは最後まで私を説得しようとしましたが、私は警察がくるまで応じることはありませんでした。

