介護現場を混乱に招く!?中高年世代が注意したい皮膚感染症「疥癬」のリスク【医師解説】

介護現場を混乱に招く!?中高年世代が注意したい皮膚感染症「疥癬」のリスク【医師解説】

疥癬の診断と治療法

疥癬が疑われるときは、どのような流れで診断・治療がおこなわれるのでしょうか? 詳しく見ていきましょう。

診断方法

疥癬の確定診断は、ヒゼンダニの有無を検出して判断します。皮膚に寄生したヒゼンダニは、角質層に潜り込み、トンネルを掘りながら卵を産み付けます。そのため疥癬に感染すると「疥癬トンネル」という線状の皮疹が見られるのが特徴。疥癬トンネルや角質層から採取した検体にヒゼンダニやその卵が認められれば、疥癬と正式に診断されます。

ただし、専門医でも1回でヒゼンダニを検出するのは難しく、見過ごされてしまうケースも珍しくはありません。仮に1回の診察でヒゼンダニが検出されなくても、疑わしい場合は複数回にわたり医師の診察を受けるようにしましょう。

疥癬の治療法と経過

疥癬と診断された場合は、ヒゼンダニを駆除するための内服薬や外用薬が処方されます。薬が効けば、通常は1~2週間程度で徐々に皮膚症状が和らぎ、快方へと向かうでしょう。ただし、角化型疥癬など症状が重症化すると治療が長引くこともあります。そのため、医師の判断のもとで、薬の服用回数や期間を守って治療を続けることが重要です。

また、ヒゼンダニが死滅した後も赤い発疹が消えずにしばらく残ることがあります。これは疥癬後遺症(かいせんこういしょう)と呼ばれる後遺症の症状です。この場合には、抗ヒスタミン薬やステロイド薬を用いた治療が検討されることもありますが、疥癬が再燃している可能性も否定できないため、少なくとも1カ月は医師による経過観察を受ける必要があります。

疥癬と診断されたら? 家庭・施設でできる感染予防策


身近な人が疥癬と診断された場合は、治療と並行して感染拡大を防ぐための対策を取らなくてはなりません。家庭や施設で正しい予防策を講じることが、二次感染を防ぐことにつながります。通常疥癬と角化型疥癬のそれぞれで、注意すべきポイントについて確認しておきましょう。

通常疥癬の感染予防策

通常疥癬の場合は、感染しても速やかに治療を開始すれば特別な対応は必要ありません。基本的には投薬治療を続けるだけで、感染は抑えられます。

ただし、同室で患者さんと布団を並べて寝たりタオルや寝具などの肌に触れるものを共有したりするのはNG。介助の場合もなるべく長時間肌が触れ合わないように心がけ、患者さんと接した後は石鹸などで必ず手を洗浄しましょう。

角化型疥癬の感染予防策

一方、角化型疥癬に感染したときは、以下のような対策が必要になります。

  • シーツは毎日交換、ビニール袋に入れて別にしておく。
  • 患者さんが触れた寝具や衣類は50℃以上の熱めのお湯に10分以上浸してから洗濯する、もしくは乾燥機を20~30分程度かけて死滅させる。
  • マットや床、寝具を丁寧に掃除する。
  • 部屋を掃除機で清掃する。
  • 血圧計や聴診器、体温計、トイレなどは専用のものを用意する。
  • 隔離部屋では予防着や手袋、マスクを着用し、履物も専用のものを使用する。
  • 集団生活においては、ほかの要介護者に疑わしい症状がある場合は早めに隔離・受診する。

家庭内でおこなう場合は感染範囲が限られているので、衣類やシーツの洗濯など、毎日できることだけで十分ですが、集団生活では感染拡大のリスクが格段に高くなるため、より厳格な管理が求められます。

特に疥癬は、完治したとしてもヒゼンダニが寄生すれば繰り返しかかる病気。一度感染が起これば対応に膨大な時間とコストを要するため、感染予防を徹底することが最も重要な取り組みになります。

受診の目安

集団感染を防ぐには、症状を見過ごさないことも大切。特に、以下のような場合は疥癬に感染している可能性が高いと言えます。2つ以上の項目に該当する場合は、速やかに皮膚科への受診を検討しましょう。

  • 夜間に体にかゆみが強くなる。
  • かゆみが普通の湿疹より強い、しこり状のかゆみがある。
  • 発疹やしこりなどの皮膚症状が見られる。
  • 身近に同様の症状を訴える人が複数人いる。

通常の湿疹と見分けが付きにくいかもしれませんが、疥癬は体温の上昇やホルモンバランスの変化によって、夜間にかゆみが強くなるのが特徴の1つ。要介護者に夜眠れないほどのかゆみがあるようなら、一度医療機関に相談してみてください。

配信元: 介護カレンダー

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