「Q熱」の感染経路をご存じですか? 予防法を併せて医師が解説

「Q熱」の感染経路をご存じですか? 予防法を併せて医師が解説

大坂 貴史

監修医師:
大坂 貴史(医師)

京都府立医科大学卒業。京都府立医科大学大学院医学研究科修了。現在は綾部市立病院 内分泌・糖尿病内科部長、京都府立医科大学大学院医学研究科 内分泌・糖尿病・代謝内科学講座 客員講師を務める。医学博士。日本内科学会総合内科専門医、日本糖尿病学会糖尿病専門医。

Q熱の概要

Q熱(Q fever)は、コクシエラ・バーネッティ(Coxiella burnetii)によって引き起こされる人獣共通感染症です。家畜の分娩時に排出される胎盤や羊水、排泄物に多く含まれる菌が環境中に拡散し、粉じんを吸い込むことで人に感染します。潜伏期間は2〜3週間で、急性期には発熱や頭痛、倦怠感といったインフルエンザ様の症状が現れます。小児では嘔吐や下痢を伴うこともあります。肺炎や肝炎を合併することがあり、慢性化すると心内膜炎や血管感染といった重篤な病態に至る可能性があります。診断には抗体検査が用いられますが、発症早期では陰性のこともあるため臨床経過と職業歴・渡航歴が重要です。治療は抗菌薬ドキシサイクリンが第一選択で、慢性Q熱では長期併用療法が必要になります。畜産従事者や獣医師など動物に接する機会が多い人が特に感染しやすく、心疾患をもつ人では慢性化リスクが高いため注意が必要です。予防の基本は防護具の使用や家畜舎の衛生管理、未殺菌乳製品の摂取回避です。日本ではワクチンは利用できないため、曝露予防が最も大切です。

Q熱の原因

Q熱(Q fever)は、コクシエラ・バーネッティ(Coxiella burnetii) という細菌によって引き起こされる人獣共通感染症です。この細菌は乾燥や熱、化学物質などに強い抵抗性を有します (参考文献1) 。羊毛の中では1年弱、生の食肉のなかでは1カ月、牛乳の中では3年以上生存することが知られています (参考文献1) 。

日本での報告は少ないですが、ニュージーランドを除く世界中で報告のある感染症です。アメリカでは年間200例程度の感染例が報告されています (参考文献2) 。

自然界においては、牛、羊、ヤギなどの家畜が主な感染源となります。分娩時に排出される胎盤や羊水、尿、糞便などに菌が含まれており、これらに汚染された粉じんを人が吸い込むことによって感染が成立します (参考文献2) 。滅菌されていない乳製品の摂取でも感染するほか、汚染された綿や麦わらなどが風にのって広範囲に広がることもしられています (参考文献1) 。人から人への感染は基本的にありません。

配信元: Medical DOC

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