●学生の「氏名表示権」を尊重
「作家名での展示」導入の背景には、著作権法19条の「氏名表示権」もあるという。
「『氏名表示権』は著作物の公開について、『作家名を表示する/しない』もしくは、『作家名などでの変名で公開できるか』を著作者自身が決めることのできる権利です。
教育機関である大学の卒業制作展という運用上、作家名の非表示は難しいかもしれませんが、作家名で表示することを決めるのは、法律で著作者に認められているものです。
昨今は社会全体で著作権についての意識が高まっていますので、東京造形大学では、著作権をはじめとした法的リテラシーの教育に注力していく方針です。
またクリエイターを育てる機関という面でも、これからも社会情勢を鑑みながら、学生を一人の作家・著作者という考えで尊重し、さまざまな取り組みをしていきたいと考えています」(担当者)
●ギャラリーストーカーから学生を守る
近年、美術大学や芸術大学では、展示や学園祭の場で学生が来場者から不適切な接触を受ける「ギャラリーストーカー」が課題になっている。
東京造形大学でも、学園祭や学外展示の場で、学生のプライバシーを脅かすような行為を確認しているという。
「深刻な事件には至っていませんが、学生には非常時に教職員へ速やかに連絡するよう指導しています。状況に応じて教職員が臨機応変に対応し、安全を最優先に行動しています」(担当者)
今後、各大学で学園祭や卒展の開催が本格化する季節を迎える。学生を守る方法としても、「作家名での展示」は今後さらに広がりを見せそうだ。
次回の「ZOKEI展」は、2026年1月23日(金)〜25日(日)に東京造形大学キャンパスで開催予定だ。

