葉酸が不足すると現れる症状

動脈硬化
葉酸の働きによって分解・再利用されるホモシステインというアミノ酸があります。
葉酸が不足することでこのホモシステインが蓄積され、血液中のホモシステイン濃度が上昇します。血中のホモシステインの濃度が高くなると血管を傷つけ動脈硬化のリスクが高くなります。
貧血
葉酸は赤血球の生成に不可欠な栄養素です。不足すると赤血球の成熟がされず酸素を運ぶことができないため貧血を引き起こします。摂取不足の他に、アルコールや服薬などによる葉酸の吸収障害、妊娠や授乳などによる需要増加などによって葉酸が不足し、貧血になることもあるためバランスの良い食事とともに意識的に葉酸を摂取することが大切になります。
味覚低下
葉酸は細胞分裂の促進や赤血球の成熟に関わる重要な働きをしています。また脳や神経の働きにも関与しています。不足すると細胞分裂がうまくできなくなり舌の粘膜が荒れ、味を感じるための感覚受容器である味蕾の再生がうまくいかなくなり味覚障害がおこるとされています。
発育不全
妊娠初期に葉酸が不足すると、胎児の脳や脊髄の元になる神経管が正常に形成されず、無脳症や二分脊椎(脊椎が背骨の外に露出してしまう先天性疾患)などの先天異常がおこるリスクが高まります。
精神的な不調
葉酸はセロトニンやドーパミンなどの神経伝達物質の合成に必要な栄養素です。これらの物質は気分や情緒の安定に関わっており、葉酸が不足するとその合成がうまくいかず、精神的な不調につながる可能性があります。
葉酸を過剰摂取すると現れる症状

葉酸には日常的に摂取しても健康に悪影響を及ぼさない最大の量である許容上限量が設定されています。過剰摂取による健康障害を防ぐために厚生労働省が設定した基準になります。
葉酸の過剰摂取は稀ですが、サプリメントや栄養補助食品の摂取により許容上限量を超えてしまう場合には注意が必要です。
葉酸の許容上限量は
1〜9歳200〜500μg
10〜17歳700〜900μg
18〜29歳900μg
30〜64歳1000μg
※通常の食品以外の食品(サプリメントや栄養補助食品など)に含まれる葉酸に適用されます
皮膚や粘膜の不調
葉酸の過剰摂取が直接的に皮膚炎を引き起こすという明確な根拠はありません。ただし、葉酸をサプリメントで多量に摂ると、ビタミンB12欠乏による巨赤芽球性貧血の症状(舌や口内の炎症、皮膚の変化など)が一時的に隠れてしまい、診断や治療が遅れる可能性があります。その結果、皮膚や粘膜の不調が進行することがあるため注意が必要です。
動悸・息切れ
葉酸が過剰にあることで一時的に造血機能が保たれてしまい、ビタミンB12欠乏の発見が遅れ、赤血球の生成がされず悪性貧血になる可能性があります。
その結果、動悸や息切れといった貧血の症状が出ることがあります。
神経症状
葉酸が多すぎることでビタミンB12が不足しDNA合成や修復が不完全になり神経伝達がうまく行かなくなることがあります。また葉酸が過剰にあることでビタミンB12が不足していることに気づきにくく悪性貧血が進行することもあり、進行すると手や足が痺れ感覚麻痺になる可能性もあります。
細胞や組織の異常促進
葉酸の過剰摂取により、前がん病変の進行が加速し、特定の人ではがんの発症リスクが上昇するのではないかという報告があります。
前がん病変は『がん』ではないものの、放置すると将来的にがんに進行する可能性がある細胞や組織の異常を指します。
認知発達への影響の可能性
妊娠期間中にサプリメントから1日1,000μg以上の葉酸を摂取した場合、400〜999μgを摂取した母親の子どもに比べて、4〜5歳時点での認知発達テストのスコアが低い傾向が報告された研究があります。ただし、これは一部の観察研究によるものであり、因果関係が明確に証明されているわけではありません。葉酸は胎児の発育に不可欠な栄養素である一方、サプリメントを利用する際は過剰摂取を避け、推奨量を守ることが大切です。

