失う歯の本数が増えるにつれ、「インプラント」と「入れ歯」のどちらの治療法が自分にとって最適か、迷う人も多いのではないでしょうか。とくに、シニア世代は見た目や使用感はもちろんのこと、長期的な予後や将来の健康状態をふまえた選択が重要となります。今回は、シニア世代がインプラント・入れ歯を選択する際に考えておきたいことについて、「浜松歯科」の中野先生に解説していただきました。

監修歯科医師:
中野 陽平(浜松歯科)
鹿児島大学卒業。鹿児島大学医学部・歯学部附属病院歯科診療部門、鹿児島市立病院歯科・歯科口腔外科などで経験を積む。現在は「浜松歯科」の理事長として、インプラント、矯正、根管治療など各分野の専門性を発揮し、複数の歯科医師と連携を図りながら幅広い治療を提供している。
編集部
外科手術をともなうインプラント治療では、年齢的な配慮が必要なケースもあるのでしょうか?
中野先生
基本的に年齢だけで治療を制限することはありませんが、体調面や全身疾患、服薬状況などに十分な配慮が必要です。例えば、重度の糖尿病の人や骨粗しょう症の治療中の人、リウマチが悪化している人などは治療が難しい場合もあります。また、心臓手術をしたばかりの人、血液をサラサラにする薬を飲んでいる人なども注意が必要です。一方で、90歳でも健康であれば治療は十分に可能なので、年齢による制限というよりは、全身の健康状態が判断の基準となります。
編集部
シニア世代が治療をする際、どのような点に注意して選ぶのがいいのですか?
中野先生
将来的な健康状態も視野に入れた歯科医院選びが重要だと思います。例えば、自身が要介護になった場合に、お口の中に何か不具合が生じた際に「歯医者さんがどのように対応してくれるのか」「往診に来てくれるのか」なども大きな判断基準になるでしょう。当院でも、要介護の患者さんのお口に何か問題が起きた際は、ご自宅への訪問診療や介護タクシーを利用した外来での治療に対応しています。このような将来的なケアの体制が整っているかを、よく確認しておくことをおすすめします。
編集部
今が健康でも、将来的に自身でケアや通院が難しくなる状況も考えておく必要があるわけですね。
中野先生
そうですね。とくに、インプラントを選択される場合は、インプラント周囲炎の対応や、必要に応じてインプラントの撤去まで対応してもらえる歯科医院を選ぶことをおすすめします。実際に、介護の現場では、いざという時にインプラントを入れた歯科医院が対応できない・してくれないというケースが問題になっています。したがって、こうした将来的なケアまで視野にいれた歯科医院選びが大切です。
編集部
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
中野先生
インプラントや入れ歯を選択する際は、お口全体のバランスもよく考えておくことが大切です。例えば、片方が入れ歯で反対が自分の歯という状況では、どうしても自分の歯がある側ばかりで噛むようになり、それが結果的に体全体のバランスを崩すことにつながってしまいます。インプラントと入れ歯、どちらの方法を選択するにしても、お口全体でバランスよく噛めるようになることを第一に考えて、治療法を選んでいただきたいと思います。
※この記事はMedical DOCにて<入れ歯orインプラントどっちがいいの? それぞれの特徴やメリット・デメリットを歯科医が解説!>と題して公開した記事を再編集して配信しており、内容はその取材時のものです。
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