ノロウイルス感染症の受診の目安と治療法
大人はどのような症状が現れたら病院に行くべきですか？
ノロウイルス感染症は多くの場合、数日で自然に回復しますが、症状が強い場合には医療機関の受診が望まれます。具体的には、嘔吐や下痢が続いて水分がとれない、尿の量が極端に少ない、高熱が持続する、強いお口の乾きやめまいなどの脱水のサインがみられるときは早めの受診を検討しましょう。
病院でのノロウイルス感染症の治療法を教えてください
ノロウイルスに直接効く特効薬はありません。細菌による感染症とは異なり、ウイルスが原因であるため抗生物質は効かないとされています。病院での治療は、主に症状を和らげることを目的とした対症療法が中心です。嘔吐や下痢によって失われた水分や電解質を補うために、点滴が行われることがあります。また、吐き気や腹痛が強い場合には、症状を抑える薬が処方される場合もあります。症状が軽ければ自宅での経過観察で問題ないですが、食事や水分がまったくとれない場合やひどい脱水状態の場合には入院による治療が必要になることがあります。
ノロウイルス感染症の大人は自宅でどのようにすごせばよいですか？
安静にすごし、脱水の予防のために十分な水分補給を心がけましょう。経口補水液が望ましいですが、なければ水やスポーツドリンクでもかまいません。のどが乾いたと感じる前に水分を少しずつ摂ることで、脱水の予防につながります。
感染を広げないための対策も大切です。タオルや食器は家族と共用せず、感染者が使ったものは熱湯や塩素系の消毒液で処理しましょう。
吐物や便を片づける際には使い捨ての手袋やマスクを身につけ、処理後には必ず手洗いを行います。嘔吐物は乾燥するとウイルスが空気中に広がりやすいため、紙や布で覆ってから消毒液を使って拭き取り、その後に十分な換気をすることが推奨されます。衣類や寝具に嘔吐物が付着した場合は、洗剤で洗った後に熱湯消毒や塩素系漂白剤を使用すると効果的です。
さらに、ドアノブやスイッチ、トイレのレバーなど多くの方が触れる場所を定期的に消毒することも家庭内での二次感染防止につながります。感染者の症状が治まった後もウイルスはしばらく便に含まれるため、症状が改善してからも数日間は特に衛生管理を徹底する必要があります。
編集部まとめ
ノロウイルスに感染すると、急な吐き気や下痢、腹痛などの症状により日常生活に支障をきたすことがあります。通常は数日で改善しますが、症状が重い場合や食事が取れないときには、点滴などの治療が必要となり、状態によっては入院が必要になることもあります。疑わしい症状があるときには自己判断せず、内科や消化器内科を受診しましょう。
また、自宅では安静にすごすとともに、感染を広げないための対策も必要です。手洗いや食品の十分な加熱、家庭内での消毒を徹底することで感染拡大を防ぐことができます。ノロウイルスは身近な感染症ですが、正しい知識と対策で乗り越えることが可能です。
参考文献
『感染性胃腸炎（特にノロウイルス）』（厚生労働省）
『JAID/JSC 感染症治療ガイドライン2015ー腸管感染症ー 第6章 食中毒病因物質の解説』（一般社団法人日本感染症学会）
『ノロウイルスの感染対策』（環境感染誌）
