発達障害の診断は、自分自身の特性を理解し、適切なサポートを受ける第一歩となります。「なぜできないのか」が明確になり、自己否定からの脱却にもつながります。この章では、診断を受けることによる心理的・実務的なメリットを紹介します。

監修医師:
三浦 暁彦(医師)
2018年富山大学医学部医学科卒業。慶應大学病院、国立病院機構久里浜医療センター、国立国際医療研究センター国府台病院等で研鑽を積む。自身が不登校、うつ病となった経験から、誰でも気軽にかかれる医療を目指して2023年6月に「おおかみこころのクリニック」を開院。医師偏在等の精神科医療の問題点を克服するため、遠隔診療の研究にも従事し、2025年9月にAIを用いたオンライン診療所「ココフィー」をリリース。著書「脱うつのトリセツ」
【資格】
日本精神神経学会 専門医
発達障害の診断を受けることのメリット
発達障害の診断を受けることには多くのメリットがあります。
まず、自分自身の特性を客観的に理解できることです。これまで「性格の問題」「努力不足」と思われていた困りごとが、脳の機能的な特性によるものだとわかることで、自己受容が進み、自己肯定感の向上につながります。
診断により、適切な支援や配慮を受けることができるようになります。職場では合理的配慮として、業務内容の調整、環境の改善、支援ツールの提供などを求めることができます。これにより、本来の能力を発揮しやすい環境で働くことが可能になります。
治療やトレーニングの選択肢も広がります。薬物療法が有効な場合もあり、注意力や衝動性の改善が期待できます。また、ソーシャルスキルトレーニングや認知行動療法など、特性に応じた訓練を受けることができます。
家族や周囲の人々の理解も得やすくなります。診断があることで、「怠けている」「わがまま」といった誤解を解くことができ、適切な関わり方をしてもらえるようになります。
経済的な支援も受けられる場合があります。障害者手帳の取得により、税制上の優遇措置、交通費の割引、就労支援などの各種サービスを利用できます。ただし、手帳の取得は任意であり、診断を受けたからといって必ず取得する必要はありません。
まとめ
発達障害は決して珍しいものではなく、適切な理解と支援があれば、その方の持つ能力を十分に発揮することができます。大人になってから発達障害に気づいた場合でも、遅すぎることはありません。自分自身の特性を理解し、適切な環境調整や支援を受けることで、より良い生活を送ることが可能です。周囲の理解と協力も得ながら、一人ひとりが自分らしく生きられる社会の実現が重要です。
参考文献
厚生労働省 発達障害の理解のために
厚生労働省 発達障害の特性(代表例)
日本発達障害学会

