届かなかった最期と、返らない想い
介護を始めて3ヶ月が経とうとしたある日の夕方、彩花から1通のチャットが入った。
「おばあちゃん、亡くなった」
短い文面を読んだ瞬間、込み上げてきたのは深い喪失感と憤りだった。確執を埋めるための話し合いもできずに介護から足が遠のき、大好きだった祖母の最期に立ち会うこともできなかった。
祖母には気付かれてなかったかもしれない。けれど、叔母家族とギクシャクしたまま最期の時間を過ごしていたことに、私は今更申し訳なさを感じては強い後悔に苛まれた。
お葬式では親類や祖母の生前の知り合いがたくさん出席していて、それぞれが故人との思い出を和やかな雰囲気で話していた。私たちも参列し、祖母との思い出話をしていたが、介護を終えても叔母家族と交わることはなかった。和やかな場の雰囲気とは裏腹に、たまに合う視線は依然として冷たく、鋭いものだった。
祖母が亡くなって、しばらくが経った。喪失感に暮れる暇もなく進む日常に何とか食らいついて、やっと慣れ始めた頃だった。私はふと、祖母の介護費用を補填したことを思い出した。
自分から申し出て補填していたものの、そこそこの金額でもあったため、私は彩花に久しぶりに連絡した。
「彩花、久しぶり。少し、確認したいことがあって」
「うん。何?」
彩花の受け答えは依然として淡々としていて、温度を感じなかった。
「おばあちゃんの介護資金、何回か決めた配分より多くこっちで出したよね?今更だけど、そこそこの額だったし、返してもらえたりしないかな?」
私は遠慮しつつも返金のお願いをした。すると、スマホ越しに彩花の深いため息を吐く声が聞こえた。
「確かに補填してもらったけど、あれって美咲の意思で出してくれたんじゃなかったの?」
「えっ?」
「いやさ、あの時“足りなくなるかも”とは言ったけど、“貨してほしい”なんて言ってないよね?」
彩花から出る言葉は、私には屁理屈にしか聞こえませんでした。だけど、彩花は構わずあの時の補填は私の善意でしたこと、返済前提としては受け取っていなかったことを平然と話した。私は呆れ切ってしまい、話を流し聞くことしかできなかった。
結局、補填した介護資金の返済はなしとなり、通話は終わった。介護が始まって母と叔母が対立するまでは、気の合う従姉妹だと思っていた彩花。しかし今となっては、もはや赤の他人のように思えるほど、見る影もなかった。
それでも私は、あの頃の彩花や母と叔母の関係が、いつかまた戻ってくるんじゃないか――そんな淡い期待を、どうしても手放せずにいた。
あとがき:すれ違いの先に残ったもの
祖母を想う気持ちは、誰もが同じだったはずなのに、立場や事情の違いが、美咲たちの心を少しずつ離していきました。善意で差し出したお金も、想いも、やがては誤解にすり替わり、何もかもが虚しくほどけていきました。
それでも、すれ違いの先に美咲に残ったのは、いつかの日のようにまた、仲良くなれることへの期待。喪失や失望を経ても、誰かを信じようとする美咲に心打たれるエピソードでした。
※このお話は、ママリに寄せられた体験談をもとに編集部が再構成しています。個人が特定されないよう、内容や表現を変更・編集しています。
記事作成: tenkyu_writing
(配信元: ママリ)

