パーキンソン病の運動症状は、日常生活に大きな影響を与える特徴的な変化として現れます。静止時の震え、筋肉の硬さ、動作の緩慢さ、バランスの不安定さという四つの代表的な症状があり、それぞれが患者さんの生活の質を左右する重要な要素となっています。ここでは、これらの運動症状がどのように現れるのか、具体的にどのような影響をもたらすのかについて詳しく見ていきます。

監修医師:
田頭 秀悟(たがしゅうオンラインクリニック)
鳥取大学医学部卒業。「たがしゅうオンラインクリニック」院長 。脳神経内科(認知症、パーキンソン病、ALSなどの神経難病)領域を専門としている。また、問診によって東洋医学的な病態を推察し、患者の状態に合わせた漢方薬をオンライン診療で選択する治療法も得意としている。日本神経学会神経内科専門医、日本東洋医学会専門医。
パーキンソン病の主要な運動症状について
パーキンソン病の症状は大きく運動症状と非運動症状に分けられます。運動症状は病気の中核をなすもので、日常生活に大きな影響を与える特徴的な症状が現れます。
四大運動症状の特徴
パーキンソン病の運動症状には、医学的に「四大症状」と呼ばれる代表的な症状があります。
「静止時振戦」は、安静にしているときに現れる手の震えです。この震えは片側から始まることが多く、感情的な興奮や緊張によって悪化する傾向があります。
「筋強剛」は筋肉が異常に硬くなる症状で、関節を曲げ伸ばしする際に抵抗を感じるようになります。医師が診察で関節を動かす場合は、ガクガクとした抵抗感が生じる「歯車様強剛」となります。
「動作緩慢」は動きが遅くなる症状です。歩行速度が低下し、表情筋の動きも乏しくなるため、無表情に見えることがあります。患者さんは「身体が思うように動かない」「動作に時間がかかる」といった訴えをされることが多くあります。
「姿勢反射障害」は、バランスを保つ能力が低下する症状です。軽く後ろから押されただけで、歩幅を調整してバランスを取ることができなくなり、転倒しやすくなります。
歩行障害と姿勢の変化
パーキンソン病では歩行にも特徴的な変化が現れます。代表的なのが「小刻み歩行」です。歩幅が狭くなり、足を地面から十分に上げることができなくなるため、すり足のような歩き方になります。
前かがみの姿勢もよく見られます。医学的には『前傾姿勢』と呼ばれ、背中が丸くなり、頭が前に出るようになります。この姿勢変化により、歩行時のバランスが不安定になり、転倒リスクが高まります。
歩き始めに足が出ない「すくみ足」も重要な症状です。特に狭い場所を通るときや方向転換時に起こりやすく、患者さんは「足が地面に張り付いたように動かない」と表現することがあります。逆に一度歩き始めると止まれなくなる「突進歩行」が生じることもあります。
階段の昇降も困難になります。特に降りるときに足がもつれやすく、手すりが必要になることが多くなります。これらの歩行障害は、患者さんの自立した生活に大きな影響を与えるため、適切なリハビリテーションが重要です。
まとめ
パーキンソン病は複雑で多面的な疾患ですが、正しい知識と適切な医療サポートがあれば、病気と上手に付き合いながら質の高い生活を長期間維持することが可能です。症状の早期発見、適切な診断と治療、継続的なケアが重要であり、患者さんとその家族が希望を持って歩んでいけるよう、医療従事者をはじめとする多くの支援者が連携してサポートしています。
参考文献
厚生労働省(パーキンソン病)
難病情報センター(パーキンソン病指定難病6)
日本神経学会(パーキンソン病診療ガイドライン)
日本パーキンソン病運動障害疾患学会

