ワキガは、脇から特有の臭いを放つ状態です。日本人の約10%がワキガであると考えられています。ワキガの方は、汗腺の一種であるアポクリン腺の数が多く、大きい傾向があります。アポクリン腺から分泌される脂質やタンパク質を含んだ汗と皮脂が混ざったものが皮膚の常在菌により分解され、特有の臭いを発します。
ワキガには、特定の遺伝子が関与していると考えられています。しかし、ワキガは日常生活において自身で対処することで臭いを軽減させることが可能です。また、対策によって改善しない場合でも、病院で処方される薬で臭いを軽減させることができます。重度の場合には、手術によって治療することもできます。本記事では、病院でのワキガの治療法やその費用などを解説します。

監修医師:
江崎 聖美(医師)
山梨大学卒業。昭和大学藤が丘病院形成外科、群馬県立小児医療センター形成外科、聖マリア病院形成外科、山梨県立中央病院形成外科などで経歴を積む。現在は昭和大学病院形成外科に勤務。日本乳房オンコプラスティックサージェリー学会実施医師。
病院でのワキガ治療の種類と効果

病院でのワキガ治療の種類を教えてください
病院でのワキガの治療は、保存療法と手術療法に分けられます。
保存療法
直接臭いを消す薬はなく、原発性腋窩多汗症に対する薬を用います。脇からの発汗を抑え、脇を乾燥させることで菌増殖を抑えて、副次的に臭いを減らします。
脇に塗る薬として、ソフピロニウム臭化物ゲルや塩化アルミニウム(※)などがあります。ソフピロニウム臭化物ゲルは1日1回、塩化アルミニウムは週2〜3回程度脇に塗ります。
※未承認医薬品などであるため医薬品副作用被害救済制度の対象とはならない可能性があります。
手術療法
保存療法で臭いを抑えられない場合には、手術が検討されます。
一般的な術式として、皮膚剪除法(ひふせんじょほう)と、有毛部皮膚切除術があり、切開範囲が少ない皮膚剪除法が第一選択とされています。皮膚剪除法では、脇の中心部を3〜4cm切開して皮膚を裏返し、目でアポクリン腺を確認して除去します。
一方、皮膚が弛緩した高齢者では、有毛部皮膚切除術を選択する場合も少なくありません。有毛部皮膚切除術では、アポクリン腺を含めた皮膚を丸ごと切除します。そのため、大きな傷が残り、皮膚がひきつれるデメリットがあります。
そのほかにミラドライという脇を切開しない低侵襲の術式を自費診療で行っている病院もあります。ミラドライは、脇に直接電磁波(マイクロウェーブ)を照射して、汗腺を熱損傷させることにより発汗を抑える術式です。
また、超音波吸引法という皮膚に5㎜程度の穴を開けて、吸引器を差し込み、アポクリン腺を吸引する方法もあります。皮膚の切開範囲が小さいため、傷跡が残りにくく、通常生活に早く戻れるメリットがあります。しかし、アポクリン腺を目で見ることができないため、皮膚剪除法と比べるとアポクリン腺の取り残しが多くなるデメリットがあります。
塗り薬のワキガ治療にはどのような効果がありますか?
原発性腋窩多汗症に対する薬を用いて発汗自体を抑え、脇を乾燥させます。その結果、菌の増殖を抑制し、副次的に臭いを減らします。一方で、アポクリン腺には直接作用しないため、重度のワキガでは効果が不十分なことがあります。
手術でのワキガ治療の効果を教えてください
アポクリン腺自体を除去することで、手術をしたほとんどの方で、大幅に臭いを軽減させることができます。しかし、完全にアポクリン腺を除去することは困難なため、わずかな臭いが残ったり、臭いが後戻りしたりする場合があります。
病院でのワキガ治療にかかる費用

塗り薬や手術でのワキガ治療は健康保険が適用されますか?
健康保険適用の可否は治療法によって異なります。以下にそれぞれの治療法における健康保険適用の有無についてお示しします。
薬
ソフピロニウム臭化物ゲルは保険適用となりますが、塩化アルミニウムは保険適用となりません。
手術
一般的な術式である皮膚剪除法(ひふせんじょほう)と、有毛部皮膚切除術は、どちらも保険適用となります。一方、ミラドライや超音波吸引法などのそのほかの術式はすべて自費診療となり、全額自己負担です。なお、保険適用となるためには、医師によりワキガであると診断されることが必要です。客観的にはワキガ特有の臭いを放っていないにも関わらず、自身が臭いがすると思い込んでいる場合には、保険適用の対象とはなりません。ワキガであることの診断は、家族歴や、症状の経過、生活への影響などの情報や、脇に5分程度ガーゼをはさんで臭いを確認するテストによって下されます。
塗り薬によるワキガの治療にかかる費用の目安を教えてください
ソフピロニウム臭化物ゲルは保険適用となり、3割負担額が約2千円となります。塩化アルミニウムは保険適用外のため、病院によって費用が異なります。
ワキガの手術の自己負担金額はどの程度ですか?
保険適用となる皮膚剪除法(ひふせんじょほう)と、有毛部皮膚切除術では、両方の脇を手術すると、約5万円かかります。そのほかの全額自己負担の術式では、費用は病院によって異なりますので、ご自身がかかっている病院で確認しましょう。

