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「なぜ警察はクマを撃たないんだ」 SNSに広がる疑問の声…実は《警察官がクマを撃てない》明確な理由があった【元刑事が解説】

「なぜ警察はクマを撃たないんだ」 SNSに広がる疑問の声…実は《警察官がクマを撃てない》明確な理由があった【元刑事が解説】

銃弾性能から見ても「クマには不向き」?

 さらに、技術的な面でも、警察の拳銃はクマへの使用に全く適していません。

 私が現職時代に携行していたのは、スミス&ウェッソンM360J「SAKURA」や、ニュー南部M60などの回転式拳銃で、弾丸は38スペシャル弾でした。また、一部では9mmパラベラム弾を使用する自動式拳銃(オーストリア製グロックなど)も配備されていますが、いずれも人体を想定した設計です。

 これらの弾丸は「過度な致死性を避けるため」に、貫通力重視・殺傷力控えめに作られています。そのため、体重200キロを超えるクマに対しては致命傷を与えられず、むしろ痛みで興奮・暴走を招く恐れがあり、大変危険です。

 また、一時的に追い払うことはできても、山に逃げ込んだクマに対して、負傷による無駄な苦しみを長く与え、時間をかけて徐々に衰弱し息絶えてしまうという結果にもなりかねないのです。

「安全と共存」を両立するために…求められるものは2つ

 では、クマによる人身被害が増加する中で、どうすれば安全と共存を両立できるのでしょうか。

 現実的な対策としては、地域社会と猟友会の連携をさらに強化し、「警察が現場を安全確保しつつ、猟友会が駆除を行う」体制を明文化することが重要で、これに関しては「緊急銃猟」という制度を新設し、条件さえそろえば自治体の首長の判断で、市街地であっても猟銃を発砲することができるようになりました。この制度は徐々に実証例が報告されています。

 また、猟友会の方々は、自治体などからの依頼を受けて出動し、命の危険を伴う作業を担っています。こうした活動に対し、十分な支援や社会的理解を広げていくことが求められます。警察・行政・猟友会がそれぞれの立場を尊重しながら協力体制を築くことが、地域の安全、人、そして野生動物の共存を両立するための第一歩になるでしょう。

 近年では、山の実りの減少や気候変動の影響などから、クマの行動範囲が人里近くまで広がっていると指摘されています。こうした背景を踏まえ、被害防止の対策を進めると同時に、自然環境の変化にも目を向けながら、長期的な視点で人と野生動物の関係を見直していくことが求められます。

 人の安全とクマの生息環境のバランスを保つことは、これからの社会にとって大きな課題です。しかし、警察の拳銃はあくまで「人を守るための最後の手段」に用いる“武器”であり、クマを撃つための“道具”ではありません。だからこそ、力ではなく「知恵」と「法制度」で対策を取ることが求められています。

 人と自然の境界をどう保ち、どう共に生きていくのか。人間の側も真剣に考えるときが来ていると私は考えます。

配信元: オトナンサー

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オトナンサー

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