町内会「退会しても費用請求」はアリ? 役員は「やめても恩恵を受けている」と主張

町内会「退会しても費用請求」はアリ? 役員は「やめても恩恵を受けている」と主張

●「一戸建て住宅地の町内会」にマンションの共益費に関する最高裁判例が適用されるか?

前提として、分譲マンション(区分所有建物)の場合、通常、共益費はマンションの区分所有者が加入する管理組合によって請求されるものですが、このマンション管理組合は区分所有法3条に基づき、区分所有者全員で構成される強制加入の団体です。

マンション管理組合との関係では、各区分所有者は、その共有持分割合に応じて共益費を負担し(区分所有法19条)、具体的には管理規約に基づき管理費や修繕積立費等の支払義務を負います。

これに対し、「一戸建て住宅地の町内会」というご相談の具体的な詳細ははっきりしませんが、居住者が任意加入する性質の自治会、町内会等であると考えられます。これは、マンション管理組合とは異なる性格の団体となります。

もっとも、先ほど申し上げたとおり、平成17年の最高裁判例は、あくまでも個別的な合意にもとづいて共益費の負担義務を認めたものと考えられます。

そこで、この判例のロジックは徴収元である団体の法的性質には必ずしも左右されないと解されます。

したがって本件においても、上記最高裁判例のロジック自体は適用されると考えられます。

●最高裁判例のロジックによって「共通費」を徴収することは可能か?

町内会規約における退会制限の有無にかかわらず、上記最高裁判例のロジックにならい、その加入者と町内会との間の個別的合意に基づき共通費(ただし共用施設の維持管理に関する共益費の部分に限る。)を徴収する可能性はあると考えます。

現に令和7年4月16日の福井地裁判決(令和5年(ワ)第273号)は、町内会の退会者に対して、自治体が管理するゴミステーションの使用量相当額の支払義務を認めました。

これは、町内会に加入しているか否かにかかわらず、住民がゴミステーションという公共インフラを使用するにあたり、使用料相当額の支払合意が存在していることを前提にするものと理解できます。

ただし注意するべきは、かかるゴミステーションの利用については、それを利用しなくとも住民において個別的に行政にゴミの集荷を依頼する等の対応の余地があるということです。  本件においても、町内会の管理する公共インフラの利用に関して個別的合意を根拠に共通費の徴収を行うことは可能ですが、その対象はあくまでも住民の主体的な利用意思が確認される必要があるものと考えます。

提供元

プロフィール画像

弁護士ドットコム

「専門家を、もっと身近に」を掲げる弁護士ドットコムのニュースメディア。時事的な問題の報道のほか、男女トラブル、離婚、仕事、暮らしのトラブルについてわかりやすい弁護士による解説を掲載しています。