町内会「退会しても費用請求」はアリ? 役員は「やめても恩恵を受けている」と主張

町内会「退会しても費用請求」はアリ? 役員は「やめても恩恵を受けている」と主張

●退会者も「恩恵」を受けているのでは?

相談者は、「町内会の退会者も、街灯や美化活動の恩恵は受けており、これを理由として退会者に費用負担を求めることは適切」と考えているようです。

「街灯や美化活動の恩恵」の具体的内容によりますが、公共インフラの主体的な利用というよりも、住民において町内会の活動による恩恵をいわば反射的に受けているというだけでは、退会者にその費用負担を求めることは困難ではないかと考えます。

あくまでも退会者による公共インフラの主体的な利用意思が確認される必要があるのではないでしょうか。

●町内会が退会者への共通費徴収を検討する場合の注意点

相談者ができることとして、以下の対応が考えられます。

町内会側としては、「共通費」という概括的かつ抽象的な括りで退会者への費用負担を求めることはできず、個別具体的な公共インフラの利用内容に応じて退会者に対する徴収の是非を検討する必要があります。

他の町内会所属者と同じ金額の共通費(通常、親睦費等の名目費用も含まれます。)の支払いがなければ公共インフラの利用を認めない、との強硬な対応を示すことは、退会者にとっては事実上の加入強制を意味し、入退会が自由であるとの町内会の法的原則に反するおそれがあります。

そこで町内会としては、例えば市町村のごみ集積所の管理運営は地域住民の協力により成り立っており、町内会(自治会)がその管理運営を担っていることが多い実情に鑑み、そのサービスの維持を継続するためにも共通費の支払いを継続してほしい旨伝え、個別に退会者の承諾を得て費用徴収をする必要があります。

あるいは、具体的な公共インフラサービスの利用に関して、事前に費用負担に関する規定を設けておき、それを対象住民に周知しておくことも考えられます

他方、退会者においては、確かに共通費の支払義務は原則としてないのですが、必要な公共インフラの利用に関しては費用負担が発生する可能性があることを考慮し、当該インフラの維持管理は町内会が担っているのか、その具体的な利用額はいくらかを町内会に確認のうえ、町内会を通さず個別的に行政サービスを利用した場合と比較して利用の是非を検討すべきでしょう。

もっとも、少なからず退会者も公共インフラにかかる地域サービスの恩恵を受けていることに鑑みれば、主体的に一定の費用負担を認めるという対応が、円滑な住環境の維持という観点からも望ましいかもしれません。

このように、本件は種々の難しい論点をはらんでおり、確たる見解もないところではありますが、双方ともに地域の実態に即した柔軟な解決が望まれる問題であるといえます。

【取材協力弁護士】
伊庭 裕太(いば・ゆうた)弁護士
アート・メディア・エンターテイメント業界を中心とした企業法務全般(紛争処理、顧問業務等)を主に扱う一方、企業・個人を問わず一般民事全般(労働、家事、相続等)を広く取り扱う。依頼者と共に妥協なき最善の解決を目指す。
事務所名:高樹町法律事務所
事務所URL:http://www.takagicho.com/

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