転職活動をする子育て世代にとって、採用面接で「子どもがいる」と伝えるべきかは悩ましい問題です。
SNSでは、転職活動中の女性の体験談に賛否の声が上がりました。その女性は「小さい子どもがいることは自分から言わず、内定後に勤務時間を相談した」といいます。
これに対して「隠すのは不誠実では」「仕事に支障がなければよいと思う」「男性と違って、女性だけが子どもがいることを言わなければならないのはおかしい」など、さまざまな意見が寄せられていました。
そもそも企業側が「お子さんはいますか?」と確認することは許されるのでしょうか。また、応募者が子どもの有無を伝える法的義務はあるのでしょうか。村松由紀子弁護士に聞きました。
●企業が「お子さんいますか?」と聞くのは不適切
──面接で企業が「お子さんはいらっしゃいますか」「子育ての予定はありますか」と聞くのは、法律上問題ないのでしょうか。
必要性もないのに「子育ての予定」や「子どもの有無」を尋ねるのは、適切とはいえません。
厚労省が提示している新しい履歴書の様式例では、「扶養家族数」「配偶者」などの欄が削除されています。
また、同省は「公正な採用選考の基本」として、応募者の適性・能力に関係のない事項を応募用紙に記入させたり、面接で質問したりして把握しないようにすることが重要としています。その中には「家族に関すること」が含まれています。
●「子どもがいる」と伝える義務はないが…
──では、応募者が「子どもがいる」と伝える法的な義務はあるのでしょうか。
子どもがいることを伝える法的義務はありません。
ただし、企業にとって「勤務時間をどの程度調整できるか」「急な欠勤がないか」といった点は、採用判断において知りたい重要な情報です。
そのため、厚労省では、家族構成を尋ねる代わりに勤務可能な時間帯を確認する質問を例示しています。たとえば次のようなものです。
「当社では時期により早朝出勤、深夜までの残業、休日出勤をお願いする場合がありますが、対応は可能でしょうか?
また、対応ができない場合、朝何時から、また夜は何時頃までであれば勤務が可能でしょうか?」
つまり、転職活動で子どもの有無を伝える義務はありませんが、勤務可能な時間帯を伝える義務はあるといえます。

