認知症におけるもの忘れ(記憶障害)は、脳の神経細胞が壊れるために起こります。認知症を引き起こす病気にはさまざまなものがありますが、ここでは代表的な原因疾患であるアルツハイマー病を例に、どのような記憶がどのような順番で忘れられていくかについてまとめます。
記事監修医師:
岩田 淳(東京都健康長寿医療センター 副院長)
なぜ忘れてしまうのか
記憶障害(もの忘れ)が主症状の一つであるアルツハイマー型認知症では、脳の神経細胞が次第に衰え減少していきます。最初に記憶の中枢を担う海馬が障害されるので、新しい情報を覚えることができなくなります。病気が進行するにしたがって、発症する前に貯蔵されていた記憶も次第に忘れていきます。
記憶の分類(1)(2)
記憶は記憶されている内容により分類されます。また、脳に保持される時間によっても分けられます。
記憶内容での分類
言葉であらわすことができる記憶を陳述記憶といいます。一方、言葉にできない記憶を非陳述記憶といいます。陳述記憶には、エピソード記憶や意味記憶、非陳述記憶には手続き記憶などがあります。
エピソード記憶
日時や場所を含む個人的体験の記憶です(「10分ほど前に、家の前の道路を救急車が走っていった」「一昨年の結婚記念日に、箱根の旅館に泊まった」など)。
意味記憶
物事の意味に関する記憶です。「リンゴ」であれば、その大きさや色、形、味、果物の一種であるといった知識の情報です。
手続き記憶
自転車の乗り方や泳ぎ方など、くりかえし体で覚えた技術の記憶です。
時間での分類
何らかの情報を記憶した時点から思い出すまでの長さで、即時記憶、近時記憶、遠隔記憶の3つに分けられます。
即時(短期)記憶
刺激を数秒程度保持してすぐに再生できる記憶です。相手の言った言葉をそのまま繰り返すことができる「オウム返し」は、即時記憶にあてはまります。
近時記憶
「朝食は何を食べたか」「昨日はどんな天気だったか」といった、記憶して数分から数日程度貯蔵して再生できる記憶です。
遠隔記憶
「卒業した中学校の名前」など、数日から年単位の時間が経過した記憶です。

