両家の親を交えた四者会談。卓也は「自由になりたい」と身勝手な主張を繰り返し、ついには「子どもを欲しいと言わなければよかった」と暴言を吐く。両親の怒りを買い、葵は実家へ避難する。
「欲しいと言わなければよかった」凍てついた愛情の終わり
卓也の「別れたい」宣言から数日後。話し合いは平行線をたどった。卓也はただ「自由になりたい」と繰り返すばかり。私は再構築を望み、話し合いの場を設けようと粘ったが、彼は常に逃げ腰だった。私の努力は、彼の冷たい態度によって日々削り取られていった。
事態の深刻さを受け、私の実母・洋子と、義母・典子も含めた四者会談が、我が家のリビングで開かれた。さくらは私の腕の中で、この緊迫した空気を知ってか知らずか、静かに眠っている。
「卓也、いったいどういうことなの?」
義母・典子さんが、これまで見せたことのない厳しい口調で言った。卓也は腕を組み、不機嫌そうに口を開いた。
「自由になりたい。それだけ。正直、もう夫婦としての愛情もないし」
それを聞いた洋子(私の母)は、これまで冷静だった顔を怒りで歪ませた。
洋子「もう子どもだって生まれているのよ?どう責任を取るつもりなのよ」
卓也「養育費は払いますよ。責任は取りますから」
洋子「葵が傷つけられてる点はどうなの?こんなに無責任に捨てるようなことしていいと思ってるの?」
卓也は、その鋭い指摘に顔を背け、最低の言葉を口にしました。
「妻も子どもも、別に欲しくなかったんですよ。俺、1人でいたかったんで」
実母と義母の怒り、葵の冷たい決意
その一言で、リビングの空気は完全に凍り付いた。私の中で、卓也への愛情と再構築の望みが完全に消え去った瞬間だった。 典子さんが、思わず立ち上がった。
「卓也!なんてこと言うの!人として最低よ。葵ちゃんはあなたを妻として支えてくれていたでしょう!」
義母が、息子に激しい怒りを露わにしたことに、私はかろうじて正気を保っていた。義母は初孫であるさくらを本当にかわいがっていた。
実母の洋子は静かに卓也を睨みつけた。
「もうあなたと話しても無駄ね。葵とさくらは、私が連れて帰ります。二度とあなたの元には返しません」
卓也は、まるで厄介払いができたとでも言いたげに、あっさりと頷いた。その日のうちに、私は母とさくらと共に実家に戻った。別居生活の始まり。私の心は、深く傷つき、同時に、冷たい決意に満たされ始めていた―――。

