脳梗塞は発症後の経過によって症状の重さや回復度が変わります。発症直後の急性期には症状が悪化することもありますが、適切な治療とリハビリによって回復を目指すことが可能です。本章では、急性期の変化と回復期リハビリの重要性を詳しく説明します。

監修医師:
伊藤 たえ(医師)
浜松医科大学医学部卒業。浜松医科大学医学部附属病院初期研修。東京都の総合病院脳神経外科、菅原脳神経外科クリニックなどを経て赤坂パークビル脳神経外科菅原クリニック東京脳ドックの院長に就任。日本脳神経外科学会専門医、日本脳卒中学会専門医、日本脳ドック学会認定医。
脳梗塞後の症状経過と回復の可能性
脳梗塞の症状は発症直後だけでなく、その後の経過においても変化します。適切なリハビリテーションと管理により、一定の機能回復が期待できる場合もありますが、後遺症が残るケースもあります。
急性期の症状変化
発症後数日間は急性期と呼ばれ、脳のむくみ(浮腫)が進行するため症状が悪化することがあります。血流が途絶えた領域の周辺組織も二次的にダメージを受け、麻痺や意識障害が強まる場合があります。この時期は集中的な医学管理が必要であり、脳圧のコントロールや全身状態の安定化が優先されます。
急性期を乗り越えると、浮腫が引いて症状がやや軽減することもありますが、障害された神経細胞そのものは再生しないため、完全な回復は困難な場合が多いです。急性期の管理が適切に行われるかどうかが、その後の回復の可能性に大きく影響します。この時期には医療チームによる綿密なモニタリングと治療が行われます。
回復期とリハビリテーション
発症後2週間から数カ月は回復期とされ、リハビリテーションが本格化します。脳には可塑性という特性があり、障害された機能を別の領域が補う形で、ある程度の回復が見込まれる場合があります。リハビリテーションは理学療法、作業療法、言語聴覚療法などを組み合わせて行われ、日常生活動作の再獲得を目指します。
早期から積極的に取り組むほど回復の可能性が高まるとされており、医療チームと患者さん、ご家族が協力して目標を設定し、継続的に訓練を行うことが重要です。回復の程度は個人差が大きく、梗塞の大きさや部位、年齢、合併症の有無などが影響します。リハビリテーションの効果を高めるためには、本人の意欲と周囲のサポートが不可欠です。
まとめ
脳梗塞は突然の発症により生活の質を大きく損なう疾患ですが、その多くは予防可能な要因によって引き起こされます。初期症状や前兆を正しく理解し、万が一の際には迅速に行動することが救命と後遺症軽減の鍵となります。片側の麻痺やろれつが回らないといった典型的な症状だけでなく、一過性脳虚血発作のような短時間で消失する症状も重要な警告サインです。FASTによる簡易チェック法を知っておくことで、ご家族や周囲の方も早期発見に貢献できます。
また、高血圧や糖尿病、脂質異常症、心房細動といった基礎疾患の管理、禁煙や適度な運動、バランスの取れた食生活など、日常の積み重ねがリスクを大幅に低減させます。年齢や性別、家族歴といった変えられない要因があっても、生活習慣の改善によってリスクをコントロールすることは可能です。定期的な健康診断を受け、自身の身体の状態を把握することも重要です。
気になる症状がある場合は、早めに内科や神経内科、脳神経外科を受診し、専門医の診察を受けることを推奨します。本記事で紹介した情報は一般的な知識であり、個別の診断や治療に代わるものではありません。脳梗塞の予防と早期発見には、正確な知識と日々の実践、そして専門医との連携が不可欠です。
参考文献
厚生労働省「脳梗塞・くも膜下出血・心筋梗塞・不整脈など
厚生労働省 – 循環器疾患の現状と対策日本脳卒中学会「脳卒中治療ガイドライン」
日本循環器学会「循環器病ガイドライン」
