ギラン・バレー症候群では、症状が時間とともに下から上へと拡大していく特徴があります。足先から始まった筋力低下が、数日のうちに大腿部、上肢、体幹へと広がり、重症例では顔面や呼吸筋にまで及ぶことがあります。この進行パターンを理解することで、早期に重症化のリスクを察知し、適切な対応につなげることができます。

監修医師:
田頭 秀悟(たがしゅうオンラインクリニック)
鳥取大学医学部卒業。「たがしゅうオンラインクリニック」院長 。脳神経内科(認知症、パーキンソン病、ALSなどの神経難病)領域を専門としている。また、問診によって東洋医学的な病態を推察し、患者の状態に合わせた漢方薬をオンライン診療で選択する治療法も得意としている。日本神経学会神経内科専門医、日本東洋医学会専門医。
筋力低下が進行する部位と順序
症状が時間とともに下から上に拡大していくことが知られており、この進行パターンを理解することで早期に重症化のリスクを察知することが可能です。
下肢から上肢への進行
初めに下肢の筋力低下が出現した後、数日以内に大腿部や臀部の筋肉にも力が入らなくなり、立位保持や歩行が困難になります。続いて上肢にも同様の症状が広がり、手指の細かい動作や腕を挙げることが難しくなります。
物を持つ、ボタンをかける、食事を摂るといった日常生活動作が制限されるようになります。箸を使う、ペンで字を書く、スマートフォンを操作するといった動作にも支障が出てきます。進行の速度は個人差が大きく、数時間で急速に悪化する方もいれば、数日かけて緩やかに進む方もいます。
一般に、症状が急速に進行するほど重症化のリスクが高いとされています。このため、下肢の筋力低下に加えて上肢にも症状が広がり始めた場合には、速やかに専門医療機関を受診することが推奨されます。
体幹・顔面・呼吸筋への波及
症状がさらに進行すると、体幹の筋力低下により座位保持が困難になることがあります。また、顔面神経が障害されると、顔の表情筋が動かしにくくなり、口を閉じる力が弱まったり、顔が左右非対称になったりします。
嚥下に関わる筋肉が障害されると、食事や水分の摂取が困難になり、誤嚥のリスクも高まります。飲み込みにくい、むせやすいといった症状が現れた場合には、注意が必要です。
もっとも注意が必要なのは呼吸筋の障害です。横隔膜や肋間筋が麻痺すると、自力での呼吸が維持できなくなり、人工呼吸器による管理が必要となります。呼吸筋麻痺は発症から1週間以内に生じることが多く、約20〜30%の方が人工呼吸管理を要するとされています。息苦しさ、話しづらさ、咳が弱くなるといった症状は呼吸筋障害の前兆であり、迅速な対応が求められます。
まとめ
ギラン・バレー症候群は、感染後に突然発症する自己免疫性の末梢神経疾患であり、両側性の筋力低下や感覚障害を主症状とします。下肢から始まり上肢、体幹、顔面、呼吸筋へと進行する特徴的なパターンを示し、早期の診断と治療が重要です。免疫グロブリン療法や血漿交換療法により多くの方は回復に向かいますが、回復には時間を要し、後遺症が残ることもあります。男性にやや多い傾向がありますが、性別を問わず発症する可能性があります。力が入りにくい、しびれが続くといった症状に気づいたら、速やかに神経内科を受診することが推奨されます。
参考文献
ギラン・バレー症候群について(厚生労働省)
ギラン・バレー症候群診療ガイドライン(日本神経学会)
神経医療研究センター – 神経筋疾患ポータルサイト(国立精神・神経医療研究センター)
ギラン・バレー症候群治療ガイドライン(日本神経治療学会)

