建物の内装や家具が燃えた場合には気づいて逃げることもできますが、服に火がついてしまうと一気に燃え広がり、大やけどとなってしまうことが多くなります。
火が燃え移りやすい服や、安全なキッチンの使い方を知って着衣着火を防ぎましょう。
着衣着火とは
消防庁がまとめた令和6年版の消防白書にある住宅火災の着火物別死者数では、1位の寝具類8.7%に次いで、衣類が6.3%と2位になっています。なお、この集計では不明が55.9%と半分以上なっていますので、実際に衣服に着火した割合はより多くなるものと思われます。 着衣着火の火元はガスコンロが一番多く、仏壇のろうそく、たき火、花火など直火のほか、炎のでない電気ストーブでも、服が熱源に接触して発火することがあります。厚着をしていると、ストーブによって火がついたことに気づかないことがあるので注意が必要です。
着衣着火がおきると、火が上方向に燃え広がっていくため、火が顔に届いてやけどをするほか、パニックとなり消火できなくなることも被害を大きくする原因となります。
服が一瞬で燃え広がる、表面フラッシュ現象
着衣着火の怖いところは、着ている服に移った火が、一気に燃え広がってしまうことです。着衣着火の中でもわずかに火に触れただけで、一瞬で服の全体に燃え広がる「表面フラッシュ現象」があります。場合によっては、1秒間で20cm以上も火が駆け上がることもあり 、一瞬で顔まで火が届くこととなります。
服の素材が綿やレーヨンなどの素材で、ネル生地、パイル・タオル地など表面に細かい起毛がある生地では、空気を含んだ起毛が一瞬で燃え広がることになります。また、静電気で毛羽が立っていたり、湿度が低かったりする時も表面フラッシュ現象がおきやすい条件となります。冬は起毛のある服を着たり、湿度が下がりやすくなったりすることもあり、条件が重なりますので特に気をつけましょう。
高齢者に多い事故
令和6年版の消防白書では、令和5年中の住宅火災による死者は1,023人、そのうち65歳以上が762人 と約74%となっています。高齢になると、とっさの行動をとりにくくなるとともに、白内障になるとガスコンロの青い炎の色が分かりにくくなりますので、特に注意が必要です。
着衣着火をおこしにくい服装、キッチンの使い方
服の素材・形
表面フラッシュ現象で紹介した通り、綿やレーヨンなどの素材で、細かい起毛のあるネル生地やパイル・タオル地などは、料理中には着ないようにしましょう。袖口から引火することが多くありますので、袖口が広がっているものや、だるだるとした胴体に広がりのあるものもやめましょう。スカーフに火がつくこともありますので、スカーフ・ストールなどは必ず外すようにしてください。また、シャツのボタンをとめていないと、前にたれ下がった生地から服に火がつくこともあります。
その他、厚着をしていると服に火がついたことに気づかないことがありますので、キッチンでは十分注意するとともに、ストーブにあまり近づかないように気をつけましょう。
火の上を通らないよう整理整頓を
コンロの奥に鍋や調味料などおいていると、物をとるときに体が火の上をまたいだ時に服に火がつくことがあります。最近はおたまやフライ返しなどを壁にはりつけて収納するグッズもありますが、取るときに火の上をまたがない配置にするようにしましょう。コンロの火は青く見える部分だけでなく、その周りも高温となるため火がつきやすくなっています。 火の見えない鍋などの周りでも着火する場合がありますので、コンロの火は必要以上に大きくせず、鍋などに袖を近づけないようにしましょう。
また、コンロやその周りの掃除をするときには、必ず火を消すようにしてください。
新型コロナウイルス感染症の流行後はアルコール消毒薬を使うことが多くなりました。アルコールを服などにこぼしてしまうと、服に浸みこんだアルコールが気化し、火に近づいただけで引火する可能性があります。アルコールをこぼした服では絶対に火に近づかず、すぐに着替えるようにしましょう。

