
本展覧会は、スペイン・カタルーニャ州と日本の生活文化をテーマにした国際文化交流プロジェクトの一環で、それぞれの国の人たちが、自国と相手国の文化をどう見ているのかという4つの視点から考察するユニークな取り組みとなっている。主催は日本とカタルーニャの有志による団体「4CATJAPO」(クアトラカットジャポ)。日本・カタルーニャ交流年の公式コンテンツとして認定され、カタルーニャ州政府日本事務所および京都府の後援を受けている。

■きっかけは「旅」から。等身大の目線で文化と向き合う
プロジェクトの発端は、バルセロナを訪れた日本人2人の何気ない旅だった。市場での買い物、テラスでの食事、街ゆく人々の色彩感覚に触れ、この文化を築いている人たちと「友達になりたい」と感じたという。帰国後、同じ想いを共有する仲間と出会い、4CATJAPOが発足。日常生活の視点から文化を語り合う、等身大の国際交流がスタートした。


■「4つの視点ワークショップ」から見えてきた日常文化の奥深さ
2024年には、日本とカタルーニャ、スペインのほかの地域混合チームによる4回のワークショップが開催された。テーマは「食」「衣」「住」「まとめ」の4つ。それぞれの国の人たちが、自国と相手国の文化をどう見ているかという「4つの視点」でディスカッションを重ね、150以上の文化的トピックを整理。オンラインツールmiroを活用し、全員がフラットに意見を交わした。
■展覧会は、進化し続ける「対話の場」
京都のGallery GOBANGURAで開催される本展では、ワークショップで得られた知見をもとにした「ディスカッションマップ」4枚がメイン展示となる。来場者は展示に直接付せんを貼ることで新たなトピックを追加でき、展覧会そのものが成長していく構成となっている。


■「食」の道具からひもとく、文化の背景と家族観
たとえば「食」のエリアでは、日本とカタルーニャの台所の違いを通じて暮らしの背景を紹介。カタルーニャでは家族でゆっくり料理を楽しむオーブン文化が、日本では時間を効率化する電子レンジ文化が根づいている。こうした生活の違いが、家族観や価値観の違いを映し出す。

■来場者が「参加者」となる、能動的なミュージアム
本展の最大の特徴は、鑑賞者自身が展示に関わり、問いに答えることで展示に参加できる点にある。「あなたの家のオーブンは?」「あなたにとって“日本らしさ”とは?」といった問いかけに付せんで応えることで、来場者自身が文化探求の当事者となる。本ミュージアムは、訪れるたびに姿を変える、“生きた展覧会”だ。
■開催概要
名称:4つの視点のミュージアム(Exposicio de Quatre Perspectives)
会期:2025年11月5日(水)〜9日(日)
会場:Gallery GOBANGURA(京都府京都市下京区不明門通松原下ル吉水町460 奥)
入場料:無料
主催:4CATJAPO
後援:日本カタルーニャ交流年、カタルーニャ州政府日本事務所、京都府
協力:バルセロナ文化センター、関西カタルーニャセンター、合同会社Tocoton、株式会社菰野デザイン研究所、株式会社コト・ラボ、ほか
■京都からバルセロナへ。交流は続いていく
京都での展示終了後、2026年6月にはスペインのジローナおよびバルセロナへ巡回予定。現地の図書館や文化施設と連携し、住民参加型の展示として展開される。国同士ではなく、人と人が出会い、対話を重ねることで、文化の理解が広がっていく。
今回のイベントについて、担当者に話を聞いてみた。
ーー今回のイベントの狙いは?
「4つの視点のミュージアム」は、日本とカタルーニャの文化を「食・衣・住・まとめ」の視点から等身大で見つめ合い、実感を通して異文化を理解することを目指す国際交流プロジェクトです。参加者同士が対話しながら展示をつくるプロセスそのものが「作品」であり、来場者もその一員として加わることで、展示は共につくる場へと進化します。異文化交流に関心のあるすべての人に開かれた体験型の展示です。
ーー今回のイベントのターゲットは?
異文化に関心を持つ一般の方、教育・デザイン・地域文化に携わる人たち、そして「国際交流に興味はあるけれど難しそう」と感じている人たちです。展示を通じて、仲間の輪を広げ、誰もが自分の視点で世界を語れる場を目指しています。
ーーイベントの目玉は?
ワークショップ参加者が実際に語り合いながら書き込んだ、「ディスカッションマップ」です。このマップには、日本人・カタルーニャ人・スペイン各地の参加者が出し合った“生の声”が、付せんでびっしりと貼られています。その数はおよそ500枚。この付せんの集合体こそが、ワークショップで生まれた「対話の記録」であり、文化の違いを考えるプロセスそのものを体験できる展示です。
さらに、会場では来場者自身も新しい付せんを貼ることができます。自由に書き加えることで、展示は日々進化しつづける“生きたミュージアム”になります。見て、感じて、そして書き込む――。来場者もこの対話の輪に加わることで、等身大の国際交流を実感できる仕掛けが、本展最大の魅力です。
ーーアイデアはどのようにして生まれた?
代表の菊池律子が東京都と三重県の二拠点生活を通じて「場所ではなく人を知ること」で地域に愛着を持った経験が原点です。旅行で出合ったカタルーニャを本当に好きになるには、現地の人と心を通わせることが欠かせないと感じ、「友達づくり」としての展覧会が始まりました。
文化の違いに直面しながら対話を重ねる中で、「この話し合いこそ学びだよね」というひと言に、このプロジェクトの本質が詰まっていると気づきました。相互理解のプロセスそのものが、等身大の国際交流の第一歩だと感じています。
ーーユーザーへのメッセージは?
文化の違いを理解し合うには、まず対話の場が必要です。参加者の言葉にもあるように、「4つの視点のワークショップ」と「4つの視点のミュージアム」は、異文化交流を超え、違いを認め合うための土台づくりを目指しています。この手法が、国や背景を越えて協働する人たちにとって、ひとつのヒントになれば幸いです。
付せんを1枚貼ることで、あなたも展示の一部になる。展示に参加できるこのミュージアムで、ふだんの暮らしにある「文化」をもう一度見つめ直してみてはいかがだろうか。
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