梅毒は「痛みが少ない」「自然に治るように見える」ため、発見が遅れやすい感染症です。初期硬結や発疹が性器以外に現れることもあり、風邪や口内炎と誤解されることがあります。症状が軽いからといって安心せず、早めに医療機関で検査を受けることが早期発見・早期治療への近道です。

監修医師:
村上 知彦(薬院ひ尿器科医院)
長崎大学医学部医学科 卒業 / 九州大学 泌尿器科 臨床助教を経て現在は医療法人 薬院ひ尿器科医院 勤務 / 専門は泌尿器科
初期症状のポイント
梅毒の初期症状は痛みや痒みが少なく、日常生活で気づかれにくい性質を持ちます。しかし早期に発見して治療を開始すれば完治が期待できるため、わずかな変化も見逃さない姿勢が大切です。本章では症状の現れ方と見逃しやすい理由を詳しく解説します。
痛みが少なく自然消失する初期病変の落とし穴
第1期の硬性下疳は触れると硬いものの、痛覚がほとんどないため放置されやすい病変です。性器や口腔など目視しにくい部位に生じる場合、気づかないまま数週間が経過することも珍しくありません。さらに潰瘍が自然に治癒するため、「一時的なできものが治った」と認識され受診に至らないケースが見られます。
しかし症状の消失は治癒を意味せず、体内では細菌が血流に乗って全身へ広がり続けます。この無症状期間にも感染力は保たれており、パートナーへ感染を広げるリスクが残ります。また口腔内の病変は口内炎と誤認されやすく、性器以外の症状にも注意を向ける必要があります。
第2期の発疹も痒みが少なく、数週間から数ヶ月で自然に薄れるため、皮膚科を受診しても他の発疹性疾患と鑑別が必要となります。無症状期間が長引くほど、診断が遅れる可能性が高まります。
性器以外の部位に現れる症状の見分け方
梅毒はオーラルセックスやアナルセックスを通じて口腔や直腸にも感染します。口唇や舌、扁桃に硬結や潰瘍が生じた場合、口内炎やヘルペスとの鑑別が重要です。梅毒性の潰瘍は境界が明瞭で底面が浅く、周囲組織の炎症が軽度である点が特徴です。
肛門周囲に潰瘍や扁平コンジローマが現れた際には、痔核や尖圭コンジローマと混同されやすいため、性的接触歴を含めた問診が診断の手がかりになります。第2期では手のひらや足の裏に特徴的な発疹が現れますが、これは他の感染症や薬疹ではあまり見られない分布です。
体幹の発疹は乾癬や薬疹、ウイルス性発疹症と似た外観を呈することがあり、血液検査による確定診断が不可欠となります。全身のリンパ節腫脹や発熱、倦怠感といった非特異的症状も見られるため、風邪と誤認して市販薬で対処しているうちに診断が遅れる事例もあります。
まとめ
梅毒は適切な知識と早期発見により、完治が期待できる感染症です。初期症状は自覚しにくく自然に消失するため、感染リスクのある方は定期的な検査を受けることが重要です。感染経路や皮膚症状の特徴を理解し、少しでも気になる症状があれば速やかに医療機関や保健所で検査を受けてください。治療は抗菌薬により確実に行われ、早期治療であれば後遺症を残さず治癒します。パートナーとともに検査と治療を受けることで、再感染や感染拡大を防ぐことができます。本記事の情報は一般的な知識であり、個別の診断や治療方針については医療機関での相談が必要です。
参考文献
厚生労働省|性感染症国立感染症研究所|梅毒とは
東京都感染症情報センター|梅毒の流行状況

