筋力低下は日常生活のさまざまな場面で具体的な支障として現れます。歩行困難や転倒リスクの増加、手指の細かい動作ができなくなるといった症状は、患者さんご本人やご家族が最初に気づく変化です。ここでは、日常動作における具体的な困難さについて、わかりやすく説明します。

監修医師:
田頭 秀悟(たがしゅうオンラインクリニック)
鳥取大学医学部卒業。「たがしゅうオンラインクリニック」院長 。脳神経内科(認知症、パーキンソン病、ALSなどの神経難病)領域を専門としている。また、問診によって東洋医学的な病態を推察し、患者の状態に合わせた漢方薬をオンライン診療で選択する治療法も得意としている。日本神経学会神経内科専門医、日本東洋医学会専門医。
力が入りにくい症状の具体的な現れ方
筋力低下は日常生活のさまざまな場面で具体的な支障として現れ、自覚しやすい症状を知ることで早期発見につながります。
歩行困難と転倒リスク
下肢の筋力低下が進むと、平坦な場所でも足がもつれやすくなり、歩行時のバランスが保てなくなります。足首の背屈が弱まるため、つま先が下がったまま歩く下垂足(かすいそく)の状態となり、段差でつまずきやすくなります。
階段の昇降では手すりが必須となり、場合によっては自力での歩行が不可能になることもあります。転倒による外傷のリスクも高まるため、症状が進行している時期には移動時の介助が必要です。歩行補助具や車椅子の導入を早期に検討することで、転倒事故を防ぎ、リハビリテーションへの移行もスムーズになります。
筋力低下がもっとも進行する時期を過ぎれば、多くの方は徐々に歩行能力を回復していきます。ただし、回復の速度には個人差があり、数週間で改善する方もいれば、数ヶ月かかる方もいます。
上肢の巧緻運動障害
手指や手首の筋力が低下すると、ペンを持つ、箸を使う、キーボードを打つといった細かい動作が困難になります。ボタンやファスナーの開閉、ドアノブを回す動作も力が入らず、日常生活に大きな制限が生じます。
肩や肘の筋力も低下するため、腕を挙げる動作や重い物を持つことができなくなります。着替えや整髪、歯磨きなどの身の回りの動作にも介助が必要となる場合があります。コップを持つ、顔を洗う、タオルを絞るといった動作も難しくなることがあります。
上肢の筋力低下は、下肢に比べて回復が早い傾向がありますが、神経の損傷が重度の場合には回復に時間を要することもあります。作業療法士による訓練や補助具の活用により、回復期の生活の質を向上させることが可能です。
まとめ
ギラン・バレー症候群は、感染後に突然発症する自己免疫性の末梢神経疾患であり、両側性の筋力低下や感覚障害を主症状とします。下肢から始まり上肢、体幹、顔面、呼吸筋へと進行する特徴的なパターンを示し、早期の診断と治療が重要です。免疫グロブリン療法や血漿交換療法により多くの方は回復に向かいますが、回復には時間を要し、後遺症が残ることもあります。男性にやや多い傾向がありますが、性別を問わず発症する可能性があります。力が入りにくい、しびれが続くといった症状に気づいたら、速やかに神経内科を受診することが推奨されます。
参考文献
ギラン・バレー症候群について(厚生労働省)
ギラン・バレー症候群診療ガイドライン(日本神経学会)
神経医療研究センター – 神経筋疾患ポータルサイト(国立精神・神経医療研究センター)
ギラン・バレー症候群治療ガイドライン(日本神経治療学会)

