ギラン・バレー症候群には複数の病型があり、障害される神経の部位や範囲によって症状の現れ方や回復の経過が異なります。神経を覆う髄鞘が主に障害される脱髄型と、神経線維そのものが障害される軸索型では、治療への反応や予後が大きく異なるため、正確な診断が重要です。

監修医師:
田頭 秀悟(たがしゅうオンラインクリニック)
鳥取大学医学部卒業。「たがしゅうオンラインクリニック」院長 。脳神経内科(認知症、パーキンソン病、ALSなどの神経難病)領域を専門としている。また、問診によって東洋医学的な病態を推察し、患者の状態に合わせた漢方薬をオンライン診療で選択する治療法も得意としている。日本神経学会神経内科専門医、日本東洋医学会専門医。
筋力低下を引き起こす神経障害の種類
複数の病型があり、障害される神経の部位や範囲によって症状の現れ方や回復の経過が異なります。
脱髄型と軸索型の違い
脱髄型は神経線維を覆う髄鞘が主に障害されるタイプで、神経伝導速度が低下しますが、軸索本体は比較的保たれています。このため、適切な治療により比較的短期間で回復する傾向があります。髄鞘は神経の周りを覆う絶縁体のような役割を持っており、これが損傷されると電気信号の伝わり方が遅くなります。
一方、軸索型は神経線維そのものが障害されるため、回復には長い時間を要し、後遺症が残ることもあります。軸索は神経の中心部分であり、ここが損傷されると再生により時間がかかるのです。
日本では脱髄型が約60〜70%を占めるとされていますが、カンピロバクター感染後には軸索型が多いことが報告されています。神経伝導検査や針筋電図検査により、どちらの病型かを判別することができ、治療計画や予後予測に役立てられます。脱髄型の場合には数週間から数ヶ月で改善が見られることが多い一方、軸索型では半年以上のリハビリテーションが必要となることもあります。
亜型による症状の違い
ギラン・バレー症候群にはいくつかの亜型が知られています。ミラー・フィッシャー症候群は眼球運動障害、運動失調、腱反射消失を三徴とし、四肢の筋力低下は軽度にとどまることが多い亜型です。目を動かしにくい、物が二重に見える、ふらつくといった症状が主体となります。
純粋運動型は感覚障害がほとんどなく、運動神経のみが障害されるタイプです。逆に、純粋感覚型では筋力低下が軽度で感覚障害が主体となります。咽頭・頸部・上肢型は嚥下障害や呼吸筋麻痺が早期に出現しやすく、迅速な対応が求められます。
これらの亜型は、血清中の抗ガングリオシド抗体の種類によって分類されることがあり、病態の理解や治療選択に役立てられています。亜型によって回復の経過や予後が異なるため、正確な診断が重要です。
まとめ
ギラン・バレー症候群は、感染後に突然発症する自己免疫性の末梢神経疾患であり、両側性の筋力低下や感覚障害を主症状とします。下肢から始まり上肢、体幹、顔面、呼吸筋へと進行する特徴的なパターンを示し、早期の診断と治療が重要です。免疫グロブリン療法や血漿交換療法により多くの方は回復に向かいますが、回復には時間を要し、後遺症が残ることもあります。男性にやや多い傾向がありますが、性別を問わず発症する可能性があります。力が入りにくい、しびれが続くといった症状に気づいたら、速やかに神経内科を受診することが推奨されます。
参考文献
ギラン・バレー症候群について(厚生労働省)
ギラン・バレー症候群診療ガイドライン(日本神経学会)
神経医療研究センター – 神経筋疾患ポータルサイト(国立精神・神経医療研究センター)
ギラン・バレー症候群治療ガイドライン(日本神経治療学会)

