インフルエンザウイルスは遺伝子にRNAを持つため、DNAウイルスと比較して変異率が高いという特徴があります。毎年の季節性インフルエンザの原因となる抗原ドリフトと呼ばれる段階的な変異に加えて、稀に大きな変異が起こるとパンデミックと呼ばれる世界的大流行を引き起こす可能性もあります。豚は鳥類と人間の両方のウイルスに感染できるため、新型ウイルス出現の重要な経路となっています。

監修医師:
五藤 良将(医師)
防衛医科大学校医学部卒業。その後、自衛隊中央病院、防衛医科大学校病院、千葉中央メディカルセンターなどに勤務。2019年より「竹内内科小児科医院」の院長。専門領域は呼吸器外科、呼吸器内科。日本美容内科学会評議員、日本抗加齢医学会専門医、日本内科学会認定医、日本旅行医学会認定医。
インフルエンザウイルスの進化
インフルエンザウイルスは遺伝子にRNAを持つため、DNAウイルスと比較して変異率が高いという特徴があります。
ウイルスの遺伝的多様性と変異メカニズム
RNA依存性RNAポリメラーゼという酵素が複製を行う際にエラーが生じやすく、これが変異の主要な原因となり、特にA型インフルエンザでは年間に約1%の変異が蓄積され、これにより既存の免疫から逃れる能力を獲得します。
抗原ドリフトと呼ばれる段階的な変異は、毎年の季節性インフルエンザの原因となります。表面抗原であるヘマグルチニンやノイラミニダーゼに小さな変化が蓄積することで、以前の感染やワクチンで獲得した免疫が効きにくくなります。この現象により、人は生涯にわたって複数回インフルエンザに感染する可能性があります。
一方、抗原シフトは異なる型のウイルス間での遺伝子の組み換えにより起こる大きな変化です。この現象は主に豚などの中間宿主において、人由来と鳥由来のウイルスが同時に感染することで生じます。抗原シフトによって生まれたウイルスは、人間の免疫系にとって全く新しい抗原を持つため、パンデミックを引き起こす可能性があります。
宿主域と種間伝播の仕組み
インフルエンザウイルスは本来、水鳥を自然宿主とするウイルスです。特にカモなどの渡り鳥の腸管で増殖し、糞便を通じて環境中に排出されます。これらのウイルスは通常、鳥類にとって病原性は低く、無症状で感染が維持されています。しかし、家禽類に感染すると高病原性鳥インフルエンザとして深刻な被害をもたらすことがあります。
人間に感染するインフルエンザの多くは、鳥由来のウイルスが直接または間接的に人間に適応したものです。この適応過程では、ウイルスが人間の細胞表面の受容体に結合しやすくなるような変異が必要となります。鳥類の受容体と人間の受容体は構造が異なるため、種を越えた感染には特定の変異が必要です。
豚は鳥類と人間の両方のインフルエンザウイルスに感染することができる「混合器」として機能します。豚の気道上皮細胞には鳥型と人型の両方の受容体が存在するため、異なる種由来のウイルスが同一個体に感染し、遺伝子の組み換えが起こる可能性があります。このメカニズムが新型インフルエンザの出現に重要な役割を果たしています。
まとめ
毎年冬になると私たちの生活に大きな影響を与えるインフルエンザですが、その流行メカニズムや適切な対策を理解することで、感染リスクを大幅に減らすことができます。特に学級閉鎖のような集団感染を防ぐためには、個人の予防意識の向上と社会全体での取り組みが欠かせません。日々の手洗いやマスク着用といった基本的な予防策から、ワクチン接種による免疫獲得まで、さまざまな方法を組み合わせることで効果的な予防が可能となるでしょう。
参考文献
[厚生労働省 インフルエンザ(総合ページ)]国立感染症研究所 インフルエンザ
[文部科学省 学校において予防すべき感染症の解説]

