第4章:介護DXの未来展望と経営者が担う役割

介護DXの最終的な到達点は、単一の事業所内での効率化に留まるものではありません。
将来、厚生労働省が構築を推進する健康・医療・介護のビッグデータを連結・一元化したプラットフォームが実現すれば 、事業所で日々蓄積されるデータが、地域や国家レベルの介護・医療政策の立案、さらには医薬品開発にまで活用される「データの二次利用」が加速します。
これは、個々の事業所の利益を超え、日本の超高齢社会を支える貴重な社会インフラを築くことに他なりません。
AIの予測分析技術はさらに発展し、ウェアラブルデバイスやIoTセンサーから収集される精度の高い生体データに基づき、健康悪化や疾病リスクを早期に特定する「予防介護」が一般化するでしょう。
これにより、健康寿命の延伸に貢献し、介護がより「自立支援」に特化したものへと進化していきます。
しかし、こうしたテクノロジーの進化が、人間性を置き去りにし、一部の人だけが良い介護を受けられる社会の分断を招く可能性も指摘されています。
だからこそ、DXの最終目的は、テクノロジーで創出された時間と資源を、「人にしかできない、心の通ったケア」に再投資することにあるべきです。
日本が古来より大切にしてきた「満足度・生活の質(Well-being)」を重視し、利用者の内面を深く配慮した「心を汲み取る自立支援」こそが、世界に示せる介護DXのビジョンです。
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おわりに:DXは成長への投資である
介護DXは、もはや一部の先進的な施設が取り組む特別なものではありません。
それは、待ったなしで進む社会の要請であり、避けられない経営課題です。
しかし、同時にそれは、人材不足の解決、ケア品質の向上、そして事業の成長を同時に実現する、未来を拓く成長への投資でもあります。
「安価」で「簡単」な第一歩を踏み出すための道筋は既に整っています。
本日ご紹介した補助金制度やレンタル・サブスクリプションといった選択肢、そしてスモールスタートの考え方をぜひご活用ください。
そして、DXによって生まれた時間を、利用者と向き合うケアの時間、そして職員の心に寄り添うマネジメントの時間へと再投資してください。
介護DXは、単なる業務効率化ツールではなく、介護の「在り方」そのものを深化させるための羅針盤です。
貴法人の未来を拓くための行動を、今、この瞬間から始めることを心よりお勧めします。
介護の三ツ星コンシェルジュ


