「4つの薬の組み合わせ」で17年の病気コントロールが見えてきた
それから約50年。多発性骨髄腫の治療は革命的な進歩を遂げました。
まず2000年代に「ボルテゾミブ」が登場。続いて「レナリドミド」が加わり、期待が高まりました。
そして画期的だったのが、2017年の「ダラツムマブ」という抗体薬の登場でした。骨髄腫細胞の表面にあるCD38という目印となる分子を狙い撃ちする薬で、移植適応となる治療において、従来の3つの薬を使うVRd療法(ボルテゾミブ、レナリドミド、デキサメタゾン)に新たにダラツムマブを加えた4つの薬を使う「D-VRd療法」により、治療成績は飛躍的に向上しました。
最新の臨床試験の結果は驚異的でした。移植治療が適応となる患者さんに対し、病気が悪化せずに過ごせる期間の推定値は205カ月、約17年という数字が出たのです。 骨髄中のがん細胞が10万個に1個以下という、通常の検査では見つからないほど少ない状態(MRD陰性)になった患者さんは75%で、従来治療の47%から大幅に向上。血液検査でがん細胞の痕跡が見つからない状態(完全奏効)以上になった患者さんは87%で、従来治療の70%を上回りました。さらに深い改善状態に達した患者さんは69%に上りました。
「17年という数字は画期的です。60歳で発症しても77歳まで、70歳なら87歳まで病気の進行を抑えられる。これはもう『治った』と同じではないでしょうか」
国際線CAとして世界を飛び回る患者さんの実例
この治療法の最大の特徴は、「日常生活を維持しながら治療を続けられること」です。
「航空会社の国際線CAさんが、治療しながらずっと働いています。最初の1カ月ぐらい休みましたが、あとは2週間に1回、今は月に1回の通院で、月3回ぐらい海外に行っています」
大手保険会社で重要な役職に就いている患者さんも、ほとんど休まずに働いているといいます。
「昔は病気になったら『少しラインから外れて病気療養に専念してはどうですか』と言われた。でも今は違います。一番怖い副作用は経済的な負担だと私は思っています」
鈴木医師は続けます。「3年、5年なら家族も耐えられるけど、10年、15年となると家庭が大変になる。だから最初にきちっと病気を治して、働き続けることが何より大事なのです」

