●芸術やアニメにも波及する危険性
──芸術の分野では、国旗を素材に使う表現も少なくありません。法案が成立すれば、どのような影響があるでしょうか。
美術作品に日本の国旗を用いること自体は、通常「侮辱的意味を有するもの」ではありません。
しかし、法が成立すれば、作者に侮辱の意図がなくても「国旗を汚した」と難癖をつける人が現れるのは容易に想像できます。さらに、「白地に赤丸の構図」が国旗を想起させるとして、「侮辱的だ」と告発されるような事態もあり得ます。
警察がそうした「言いがかり」に乗っかって捜査する可能性も、ゼロではありません。
この危険は、芸術に限らず、漫画・アニメ・SNS投稿などの表現活動全般にも及びます。
また、この罪の要件にあたらない行為にまで「日本を侮辱した」と攻撃する風潮を助長するおそれもあります。
結果として、国民の表現の自由を萎縮させるだけでなく、創作や言論の健全な発展を阻害します。この観点からも、日本国国章損壊罪の新設は不要であり、有害です。
【取材協力弁護士】
林 朋寛(はやし・ともひろ)弁護士
北海道江別市出身。札幌南高、大阪大学卒。京都大学大学院法学研究科修士課程修了。平成17年10月弁護士登録(東京弁護士会)。沖縄弁護士会を経て、平成28年から札幌弁護士会所属。
居住地(選挙区)で国民の一票の価値が異なる問題についての選挙無効訴訟に関与している。
事務所名:北海道コンテンツ法律事務所
事務所URL:https://www.sapporobengoshi.com/

