「その女を呼び出して。慰謝料請求するから!」
そう告げ、私は舞子を呼び出した。直接話すのは、初めてのこと。どんな女性なのか、どんな謝罪の言葉があるのか、ほんの少しの期待と、拭いきれない憎しみが胸の内で渦巻いていた。しかし、舞子は私の想像をはるかに超える冷静さだった。
「はい、基樹さんとはお付き合いしています。結婚されているのは知っていましたよ」
彼女は淡々と、まるで天気の話でもするように言い放った。
「彼との将来は『穂希ちゃんの子育てを全うしたら考える』という約束をしていましたので。今すぐ離婚してほしいだなんて思ってません。すぐに再婚したい気持ちは、私にもありませんから安心してくださいね」
その言葉に、私の頭は真っ白になった。まるで、私が知らない間に、私の人生が勝手に決められていたような、そんな理不尽さ。「安心して」と不倫相手に言われるなんて、私はどれだけバカにされているんだろう。
当事者のはずなのに…蚊帳の外
相手の女・舞子から、謝罪の言葉は一切ありません。既婚者で、子どもがいることも知っていました。さらに、離婚については、子どもが成長したら考えると言います。ゆうかの知らないところで、将来が勝手に決められていたのです…。
あまりにも図太い態度に、怒りがこみ上げてきます。
慰謝料請求も「ノーダメージ」
慰謝料の話になると、彼女はため息をつきながらこう言ったのだ。
「慰謝料ですか?別に構いませんよ。あなたの請求した額よりも上乗せして、離婚しようがしまいが一括で払いますから」
こちらが提示した額よりも多い金額を、一括で?その言葉は、まるで「私には痛くも痒くもない」と言われているようだった。私がどんなに怒り、どんなに苦しんでいるかなんて、まるで響いていない。彼女の冷酷なまでに落ち着いた態度に、私の腹の底から怒りが込み上げてくる。
そして何より夫の基樹が何も言わない様子が、無言でいながら舞子側の人間だというのが伝わってきてつらかった。
私は、一体何のために生きているんだろう。家に戻れば穂希がいるから、私はなんとか立っていられるけれど、この惨めさから抜け出す術が、どこにも見つからない――。私はその日、どうやって家に帰ったかも思い出せないほど、憔悴して帰宅した。
慰謝料の話になっても、不倫相手の女は動じません。さらに、夫・基樹の態度も信じられません。2人とも、罪悪感は抱かないのでしょうか?
不倫をされたうえに、ここまでバカにされた態度を取られたら…。誰だって傷つきますよね。ゆうかにとって、唯一の救いは娘・穂希(ほまれ)です。
やり切れない思いを抱えながら過ごしていたある日、偶然、夫の上司・日下部さんと会います。当初、夫の不倫のことを言うつもりはありませんでした。ですが、家庭の話を振られた途端、ゆうかは涙をこらえきれなくなったのです。異変を察知した日下部さんは、静かにゆうかの話に耳を傾けます。そして…。

