胎児の命に影響する? 妊娠中「甲状腺クリーゼ」の深刻リスクとは【医師監修】

胎児の命に影響する? 妊娠中「甲状腺クリーゼ」の深刻リスクとは【医師監修】

甲状腺クリーゼは、甲状腺機能亢進症が急激に重篤化した状態で、適切な対処を行わなければ生命に関わる危険な疾患です。特に妊娠中の方にとっては、母体と胎児の両方に深刻な影響を与える可能性があるため、早期の認識と適切な医療機関での治療が極めて重要となります。
本記事では、甲状腺クリーゼの症状の見分け方から、妊娠中に起こりうるリスク、そして発症の原因について解説します。

五藤 良将

監修医師:
五藤 良将(医師)

防衛医科大学校医学部卒業。その後、自衛隊中央病院、防衛医科大学校病院、千葉中央メディカルセンターなどに勤務。2019年より「竹内内科小児科医院」の院長。専門領域は呼吸器外科、呼吸器内科。日本美容内科学会評議員、日本抗加齢医学会専門医、日本内科学会認定医、日本旅行医学会認定医。

妊娠中の甲状腺クリーゼが胎児に与える影響

甲状腺クリーゼが妊娠中に発症した場合、胎児への影響は多岐にわたり、妊娠の継続や胎児の健全な発育に重大な脅威となります。母体の病態が胎児に与える直接的・間接的影響を正確に把握することは、適切な治療方針の決定に不可欠です。

胎児発育と器官形成への影響

甲状腺クリーゼによる母体の高体温は、胎児の中枢神経系の発達に悪影響を与える可能性があります。特に妊娠初期の器官形成期においては、持続的な高体温が神経管閉鎖障害などの先天奇形のリスクを増加させることが懸念されます。また、高体温は胎児の細胞分裂や蛋白質合成にも影響を与え、全身の器官発育に遅延を生じさせる可能性があります。

母体の循環不全は胎盤血流の減少を引き起こし、胎児への酸素や栄養素の供給が不足することがあります。これにより胎児発育遅延(FGR:Fetal Growth Restriction)のリスクが高まり、出生時体重の減少や各器官の発育不全を来す可能性があります。

甲状腺ホルモンの胎盤通過性は限定的ですが、母体の甲状腺機能亢進状態が持続すると、胎児の甲状腺機能にも間接的な影響を与えることがあります。胎児甲状腺機能亢進症が発症すると、胎児頻脈、胎児甲状腺腫、羊水過多などの所見が認められることがあります。

妊娠合併症と分娩への影響

甲状腺クリーゼは早産のリスクを増加させます。母体の循環不全や子宮血流の減少により、子宮収縮が誘発されやすくなるためです。また、母体の全身状態の悪化により、妊娠の継続が困難となり、医学的適応による早期分娩が必要になる場合があります。

常位胎盤早期剥離のリスクも増加することが報告されています。母体の血管攣縮や循環動態の変化により、胎盤の血流が不安定となり、胎盤の一部または全部が子宮壁から剥離する可能性があります。この合併症は、母体と胎児の両方にとって緊急事態となります。

分娩時の甲状腺クリーゼは、分娩進行に重大な影響を与えます。子宮収縮の異常や産道の軟部組織の変化により、分娩遷延や難産となる可能性があります。また、分娩時の出血傾向が増強することもあり、産科的出血のリスク管理が重要となります。

まとめ

甲状腺クリーゼは、適切な知識と早期対応により予防可能です。症状の初期段階での認識、妊娠中の特別な配慮、そして発症原因の理解は、患者さんとそのご家族にとって生命を守るための重要な情報となります。特に妊娠中の方では、母体と胎児の両方への影響を考慮した慎重な管理が不可欠です。
甲状腺機能亢進症と診断されている方や、甲状腺に関する症状がある方は、定期的な医療機関での経過観察を受け、緊急時には迷わず専門医療機関を受診することをおすすめします。

参考文献

日本甲状腺学会 – 甲状腺クリーゼの診断と治療

日本内分泌学会 – 甲状腺疾患診療ガイドライン

日本産科婦人科学会 – 妊娠と甲状腺疾患

日本内科学会 – 妊娠中の甲状腺疾患の薬物療法

配信元: Medical DOC

提供元

プロフィール画像

Medical DOC

Medical DOC(メディカルドキュメント)は800名以上の監修ドクターと作った医療情報サイトです。 カラダの悩みは人それぞれ。その人にあった病院やクリニック・ドクター・医療情報を見つけることは、簡単ではありません。 Medical DOCはカラダの悩みを抱える方へ「信頼できる」「わかりやすい」情報をお届け致します。