10月27日、介護業界に大きなニュースが飛び込んできました。
同日開催された社会保障審議会介護保険部会で、厚生労働省がケアマネジャー資格の更新制度を廃止する案を示しました。
年内に議論をとりまとめ、来年の国会に関連法改正案を提出する方向です。

ケアマネ資格は有効期間が5年間で、更新しないと失効してしまいます。
また更新のためには一定の研修を受講しなくてはいけません。
必要な研修期間は資格取得後の実務経験の有無や具体的な実務期間の長さ、そして更新回数などにより違ってきますが、最長で88時間にもなります。
比較的大きな介護事業者に雇用されている人ケアマネであれば、社内の他のケアマネに日頃の業務を分担してもらうなどして研修に参加する時間を確保できます。
もちろん、受講中も給与は発生します。
しかし、1人で居宅介護支援事業所を運営するケアマネの場合は、研修受講中は事業所の業務が停止してしまいますし、その間は収入が入ってきません。
こうしたことから、ケアマネの業界団体である一般社団法人日本介護支援専門協会などは「負担が重すぎる」として制度の見直しを求めていました。
今回、厚労省が示した案では、更新制度自体は無くしても「介護保険制度の改正などに合わせた知識・情報のアップデートは必要」との考え方から、定期的な研修は残します。
ただし、一定期間内に分割して受講できるようにするなどして、より受講しやすい環境にしていく予定です。

今回、厚労省が改正案を示したのには「将来のケアマネ不足への懸念」があります。
以前もこのコラムで解説したと思いますが、ケアマネ試験の合格者数は、第1回(1998年度)は約9万1000人いました。
しかし、その後は受験者数・合格者数ともにほぼ一貫して減り続けており、ここ5~6年の合格者は1万人程度で推移していました(前回の2024年度は1万7228人と大きく増加しています)。
初期の頃に資格を取得したケアマネの中には定年退職、高齢などを理由に既に業務を辞めている人も多いと思われます。
このため、ケアマネ資格保有者の数は年々減っていくことが予想されています。
また、資格保有者の中には、うっかり更新を忘れて資格を失効する人や、実務を行っていない場合には研修受講の負担を嫌ってわざと更新をしない人もいるそうです。
更新制度の廃止は、こうした流れに少しでも歯止めをかけようという狙いがあると思われます。
厚労省の案には、更新制度の廃止に加えて、ケアマネになりやすい環境を整えることで受験者自体の増加を目指す施策が盛り込まれました。
①資格取得に必要な実務経験5年を3年に短縮する
②実務経験の対象となる国家資格を新たに5つ増やす、などです。

しかし、このニュースに対しネット上では「ケアマネの質が十分に担保できるのか」「ケアマネの数を増やしたいなら、まず報酬をあげるべきではないか」など、効果を疑問視する声が多く挙がっています。
近年は加算などで介護現場スタッフの処遇改善が進み「介護福祉士として現場でキャリアを重ねた方が、ケアマネよりも稼げる」といった理由から、ベテラン介護スタッフがケアマネになることを避ける傾向が強くなっていると言われています。
また、利用者やその家族から「次に家に来るついでに○○を買ってきて欲しい」など、本来の業務以外のことを依頼されるケースが増えるなどしており「ケアマネは多忙になる一方の割には、全く収入が増えない仕事」という認識が強くなっているのも問題です。
ケアマネの数を増やすには「なりやすさ」だけでなく「なった後も専門性を活かし十分に食べていける」制度作りが求められていると言えます。
介護の三ツ星コンシェルジュ


