プロテアソーム阻害剤が変えた治療の常識
2000年代前半、ボルテゾミブというプロテアソーム阻害剤の登場が、骨髄腫治療に革命をもたらしました。
黒田医師は、その作用機序を都市のインフラに例えて説明します。
「細胞の中には、古くなったタンパク質をバラバラに分解して再利用するプロテアソームという『ゴミ処理再利用施設』があります。がん細胞は活動が激しいので、このゴミ処理施設がフル稼働しています。東京でもしもゴミ処理施設が1日ストップしたら大変なことになりますよね。同じように、がん細胞でこれをストップさせると、普通の細胞よりもダメージが強いのです」
この薬の革命的な点は、患者さんごとの遺伝子異常の違いに関係なく、「最大公約数的に」効くことでした。VMP療法(ボルテゾミブ+メルファラン+プレドニゾロン)により、奏効率は30%から90%へと劇的に向上。完全奏効率も9%から40%以上に跳ね上がりました。
20年かけて積み上げてきた「薬の上乗せ」戦略
骨髄腫治療の進化を、黒田医師は野球のピッチャー交代に例えて説明します。
「昔のMP療法は1回途中でダメだった、コールド負けみたいな感じでした。でも最近は5回、6回まで投げられるピッチャー(薬)が出てきた。場合によっては完投してくれるピッチャーも現れました」
この20年間の治療の進化は、着実な「積み上げ」によって実現しました。まずプロテアソーム阻害剤の追加、続いて免疫調節薬のレナリドミドが登場。そして抗体薬のダラツムマブが加わりました。「骨髄腫細胞の95%以上に発現するCD38を標的にして、しかも免疫を抑制する細胞にも効くダブルアタック」という画期的な薬剤でした。

