急性心不全になりやすい人の特徴とは?メディカルドック監修医が解説します。
※この記事はメディカルドックにて『「急性心不全の前兆となる3つの初期症状」はご存知ですか?予防法も医師が解説!』と題して公開した記事を再編集して配信している記事となります。

監修医師:
丸山 潤(医師)
【保有資格】
医師/医学博士/日本救急医学会救急科専門医/日本集中治療医学会集中治療専門医/DMAT隊員/日本航空医療学会認定指導者(ドクターヘリの指導者資格)/JATECインストラクター/ICLSインストラクター
「急性心不全」とは?
急性心不全とは、心臓が血液を体中に十分送り出すことができなくなる状態を指します。これにより、各臓器が必要な酸素や栄養を受け取れず、さまざまな症状が発生します。本記事では急性心不全の特徴やその予防法について詳しく解説します。
急性心不全になりやすい人の特徴
男性
生涯における心不全発症リスクは男女ともに5 人に1人と高いのですが、男性の方がより若いうちに心不全を発症し、女性より生命予後が悪い(余命が短い)との報告があります。女性ホルモンであるエストロゲンには、心血管に対するさまざまな間接的もしくは直接的な保護作用があることが知られており、男女差に影響を与えている一因と考えられています。また、特に中年期以降の男性では、喫煙、運動不足、不健康な食生活などが心臓病のリスクを高め、結果として急性心不全へとつながる可能性があります。
高齢者
日本での慢性心不全の大規模観察研究であるCHART-2(Chronic Heart Failure Analysis and Registry in the Tohoku District 2)研究では、心不全患者全体の68%が65歳以上、全体の34%が75歳以上の後期高齢者であり、高齢者は若者に比べて急性心不全のリスクが高まります。これは、加齢により心臓の機能が低下すること、また高齢になるとさまざまな心不全につながる生活習慣病などを抱えていることが多いためです。
高齢者は症状が出にくい、または典型的でないことが多いため、心不全の初期症状を見逃しやすいという特徴もあります。高齢の家族がなんとなく元気がない場合は心不全で苦しんでいる可能性もあります。いつもと様子がおかしい時にはお近くの内科を受診し相談しましょう。
メタボリックシンドローム(メタボ)
メタボリックシンドローム(メタボ)は、内臓肥満に高血圧症、糖尿病、脂質異常症などが組み合わさっている状態を指し、急性心不全のリスクを大幅に高めるとされています[1] 。心臓病は動脈硬化が原因となって起こることが多く、高血圧症、糖尿病、脂質異常症、喫煙は動脈硬化の危険因子です。そして、これらの病気は生活習慣病と呼ばれ、内臓肥満とのつながりが強いということがわかっています。
日本ではウエスト周囲径(ヘソの高さの腹囲)が男性 85cm、女性 90cm を超え、高血圧・糖尿病・ 脂質異常症の3つのうち、1つに当てはまるとメタボ予備群、2つに当てはまるとメタボと診断されます。健康的な食生活と運動による肥満予防、定期的な健康診断による肥満や生活習慣病の早期発見が大切です。
心疾患の既往
心筋梗塞や心臓弁膜症などの心疾患になったことがある人は、急性心不全になりやすいといわれています。心筋梗塞は、冠動脈の一部が閉塞し心筋が酸素不足に陥る病態であり、これにより心筋が壊死してしまうと、壊死した心筋が動かなくなり心臓のポンプ機能が低下します。また、心臓弁膜症は、心臓の弁が正常に機能しないことで血液がスムーズに流れなくなり、心不全を引き起こす可能性があります。弁膜症は心雑音でわかることがあるため、定期的な健康診断(心臓の聴診)を受けることが早期発見につながります。

