「白血病」のメカニズムをご存知ですか? 融合遺伝子の恐ろしさとは

「白血病」のメカニズムをご存知ですか? 融合遺伝子の恐ろしさとは

白血病の発症には、血液細胞の遺伝子に生じた異常が深く関わっています。染色体転座や遺伝子変異といった複雑なメカニズムが、細胞の正常な分化や増殖を妨げ、がん化へとつながる可能性があります。これらの遺伝子異常を理解することは、白血病の診断や治療方針の決定に欠かせません。ここでは代表的な染色体転座や遺伝子変異の蓄積プロセスについて、科学的な観点から詳しく解説します。

山本 佳奈

監修医師:
山本 佳奈(ナビタスクリニック)

滋賀医科大学医学部卒業 / 南相馬市立総合病院や常磐病院(福島)を経て、ナビタスクリニック所属/ 専門は一般内科

白血病を引き起こす遺伝子異常

白血病の発症には、血液細胞の遺伝子に生じた異常が深く関与しています。これらの変異が細胞の正常な分化や増殖を妨げ、がん化につながる可能性があります。

染色体転座と融合遺伝子の形成

白血病の原因として重要なのが、染色体転座と呼ばれる遺伝子異常です。染色体転座とは、異なる染色体の一部が入れ替わる現象を指します。代表的な例として、慢性骨髄性白血病の約95%で見られるフィラデルフィア染色体があり、これは9番染色体と22番染色体の一部が入れ替わることで生じます。

この転座により、本来別々に存在していたBCR遺伝子とABL遺伝子が融合し、BCR-ABL融合遺伝子が形成されます。この融合遺伝子が産生する異常なタンパク質は、細胞増殖のシグナルを常に送り続けるため、白血球が無制限に増殖してしまうとされています。分子標的薬の開発により、この異常なタンパク質の働きを抑制する治療が可能になりました。

急性骨髄性白血病では、8番染色体と21番染色体の転座、あるいは15番染色体と17番染色体の転座などが知られています。これらの染色体異常は診断の確定や予後の予測、治療方針の決定に役立つ重要な情報となります。

遺伝子変異の蓄積メカニズム

白血病の発症には、複数の遺伝子変異が段階的に蓄積するプロセスが関与しているとされています。造血幹細胞に最初の遺伝子変異が生じても、すぐに白血病を発症するわけではありません。細胞の増殖制御や分化、アポトーシス(細胞死)などに関わる複数の遺伝子に変異が重なることで、ようやく白血病細胞としての性質を獲得する可能性があります。

FLT3遺伝子やNPM1遺伝子、CEBPA遺伝子などの変異は、急性骨髄性白血病でよく見られます。これらの遺伝子は細胞の増殖や分化を制御する役割を担っており、変異によってその機能が失われると、未熟な白血球が分化できずに増え続ける場合があります。

遺伝子変異の多くは後天的に生じるもので、放射線や化学物質への曝露、ウイルス感染などが引き金となることがあるとされています。ただし、同じ環境要因に曝露されても白血病を発症する方としない方がいることから、個人の遺伝的背景や免疫状態なども発症に影響すると考えられています。これらの遺伝子変異はほとんどが後天的に生じるもので、親から子へ直接遺伝することはまれです。ただし、一部には家族性白血病など遺伝的素因が関与する例も報告されています。

まとめ

白血病は早期発見と適切な治療により、寛解や長期生存が期待できる疾患となっています。疲労感、発熱、出血傾向などの症状が続く場合は、速やかに血液内科を受診することが重要です。ただし、これらの症状は他の疾患でも現れるため、過度に不安を感じる必要はありません。気になる症状が続く場合は、医療機関での相談をおすすめします。

定期的な健康診断を受け、血液検査の異常を見逃さないことも、早期発見につながる可能性があります。白血病について正しい知識を持ち、自身の身体の変化に注意を払うことで、適切なタイミングで医療機関を受診し、より良い治療成績を得ることが可能になる場合があります。

気になる症状がある場合や、リスク要因を持つ方は、定期的に医療機関で相談されることをおすすめします。

参考文献

国立がん研究センター がん情報サービス「白血病」

日本血液学会「造血器腫瘍診療ガイドライン」

厚生労働省「がん対策情報」
配信元: Medical DOC

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