発症リスク上昇! 「白血病」を引き起こす生活の中の危険因子とは

発症リスク上昇! 「白血病」を引き起こす生活の中の危険因子とは

遺伝子異常を引き起こす背景には、環境中の物理的・化学的要因が存在する場合があります。放射線被曝やベンゼンなどの化学物質への曝露が、白血病のリスクを高める可能性について研究が進められています。これらの環境要因は職業や生活環境によって異なるため、個々のリスクを理解することが予防の第一歩となります。ここでは白血病発症に関連するとされる環境要因について、疫学研究をもとに詳しく見ていきます。

山本 佳奈

監修医師:
山本 佳奈(ナビタスクリニック)

滋賀医科大学医学部卒業 / 南相馬市立総合病院や常磐病院(福島)を経て、ナビタスクリニック所属/ 専門は一般内科

白血病発症に関わる環境要因

遺伝子異常を引き起こす要因として、環境中の物理的・化学的要因が知られています。これらへの曝露が白血病のリスクを高める可能性があるという研究報告があります。

放射線被曝と白血病リスク

高線量の放射線被曝は、白血病の発症リスクを上昇させる可能性があることが疫学研究で示されています。広島・長崎の原爆被爆者を対象とした長期追跡調査では、被曝線量と白血病発症率の間に量反応関係が認められました。主に急性骨髄性白血病において、被曝後5〜10年で発症リスクが高まることが報告されています。その後は徐々に低下しますが、完全にはベースラインに戻らないとされています。

医療分野では、過去にがん治療のために放射線療法を受けた患者さんで、治療から数年後に二次性白血病が発症する例が報告されています。特に小児期に放射線治療を受けた方では、成人後の白血病リスクが上昇する可能性があることが知られています。ただし、現代の放射線治療では線量や照射範囲の最適化により、二次性白血病のリスクは低減されています。

医療従事者や原子力施設作業者など、職業上の放射線被曝についても注意が必要とされています。適切な防護措置と被曝線量管理により、リスクは抑えられますが、長期にわたる低線量被曝の影響については継続的な研究が行われています。

化学物質と薬剤の影響

ベンゼンは白血病との関連が明確に証明されている化学物質です。石油化学工業や靴製造業などベンゼンを扱う職場での長期曝露により、急性骨髄性白血病のリスクが上昇する可能性があることが報告されています。現在では労働安全衛生法により厳格な管理が求められていますが、過去に高濃度曝露を受けた方では注意が必要とされています。

抗がん剤による化学療法を受けた患者さんで、治療関連白血病が発症することがあります。特にアルキル化剤やトポイソメラーゼII阻害剤などの薬剤を使用した場合、数年後に急性骨髄性白血病を発症するリスクが高まる可能性があります。

喫煙も白血病、特に急性骨髄性白血病のリスクをわずかに高めることが報告されています。タバコの煙には複数の発がん物質が含まれており、特に急性骨髄性白血病のリスクをわずかながら上昇させる可能性があるとされています。禁煙はさまざまながんの予防につながるため、健康維持の観点から推奨されます。

まとめ

白血病は早期発見と適切な治療により、寛解や長期生存が期待できる疾患となっています。疲労感、発熱、出血傾向などの症状が続く場合は、速やかに血液内科を受診することが重要です。ただし、これらの症状は他の疾患でも現れるため、過度に不安を感じる必要はありません。気になる症状が続く場合は、医療機関での相談をおすすめします。

定期的な健康診断を受け、血液検査の異常を見逃さないことも、早期発見につながる可能性があります。白血病について正しい知識を持ち、自身の身体の変化に注意を払うことで、適切なタイミングで医療機関を受診し、より良い治療成績を得ることが可能になる場合があります。

気になる症状がある場合や、リスク要因を持つ方は、定期的に医療機関で相談されることをおすすめします。

参考文献

国立がん研究センター がん情報サービス「白血病」

日本血液学会「造血器腫瘍診療ガイドライン」

厚生労働省「がん対策情報」
配信元: Medical DOC

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