コンビニエンスストアから学んだ物流革命—— 日本初の挑戦の数々
編集部
神野会長は他業界から学んだイノベーションが多いと伺いました。
神野会長
そうですね。90年代、経営を始めた頃の愛読書は「日経ビジネス」と「日経ベンチャー」でした。特にベンチャー企業の動向は、むさぼるように読み込みました。当時「日経ベンチャー」の有料会員になると、ベンチャー企業社長の講演録CDが送られてきました。正直、つまらないものもありましたが(笑)、そこから多くのヒントを得ました。医療界の常識にとらわれない、新鮮な発想との出会いでした。編集部
具体的にはどんなことを導入されたのですか?
神野会長
当時、日本の医療機関として初めてPHSを導入したのは当院です。ほかにも院内コンビニの第1号も当院ですし、医療費のクレジットカード決済も日本初でした。90年代当時でさえ、私たちの日常生活ではクレジットカード決済は当たり前でした。「なぜ病院だけが例外なのか」この素朴な疑問から始まりました。健診ではクレジットカード決済を導入している施設もありましたが、通常の医療費での導入は前例がありませんでした。カード会社に相談したところ、すぐに協力を得られ、実現に至りました。
編集部
電子カルテも早期から導入されていたそうですね。
神野会長
ソフトウェアサービス社のローンチカスタマー、つまり第1号ユーザーとして様々なシステムを導入しました。その際、社長と最初に約束したのは「絶対にカスタマイズしない」ということでした。既製服のように標準化されたシステムを使う代わりに、価格を抑える。これが基本方針です。最近導入した施設から「全然要望を聞いてくれない」と苦情を受けることがありますが、「だからこそ、この価格で導入できるのです」と説明しています(笑)。
生成AIで年間4000万円削減—— デジタル革命の最前線
編集部
最近は医療DXにも力を入れているそうですね。
神野会長
生成AIの可能性には心底ワクワクしています。他業界での活用事例を研究し、医療への応用を模索する日々は、まさに楽しくて仕方がありません。当院では生成AI導入により、時間外手当が大幅に削減されました。年間の効果を計算すると、4000万円から5000万円の削減を実現しています。
もちろん、職員の時間外手当としての手取りが減少する面はありますが、その分はベースアップで対応しています。。現代の若い世代にとって、長時間労働よりもワークライフバランスの充実の方が重要でしょう。
編集部
スマートウォッチを使った新事業も始めていると伺いました。
神野会長
現在、入院患者にスマートウォッチを装着してもらい、血圧、脈拍、酸素飽和度、体温などのバイタルデータをスマートフォンで収集する実証実験を進めています。将来的には、退院後も希望者にスマートウォッチを購入していただき、継続的な健康管理サービスを提供することも視野に入れています。
高齢者のベッドにはセンサーが設置されていますが、リハビリ中やトイレ、歩行時の状況は把握できません。転倒してもリアルタイムで検知できない。スマートウォッチなら、転倒検知はもちろん、リハビリ時の心拍数変化まで、全てのデータを収集できる可能性があります。
編集部
人員配置基準についてはどうお考えでしょうか?
神野会長
DX時代の到来を直視すべきです。自動車製造はロボットが主役になりました。なぜ医療だけが大量の人手を必要とするのでしょうか。重症患者さんが多く在院日数が短い急性期病院は確かに忙しく、人手が必要です。しかし、DXやロボティクスの導入により少人数でも運営可能になってきています。問題は、現行制度では人員配置が診療報酬に直結するため、効率化が逆にペナルティになってしまうことです。

