護送船団方式からの決別—— 「ATM」で切り拓く未来
編集部
全日本病院協会会長として、どのような方針で臨まれますか?
神野会長
「護送船団方式からの決別」が最重要課題です。現状に満足し、危機感を持たない人々とは共に歩めません。危機感を共有し、変革への意志を持つ人々と手を携えて前進したい。そこで会長就任演説では「ATM(明るく楽しく前向きに)」というモットーを掲げました。危機的状況だからこそ、前向きな姿勢で乗り越えようというメッセージです。
編集部
診療報酬改定についてはどうお考えですか?
神野会長
6月の骨太の方針で、物価・賃金上昇への考慮が明記されたことは評価できます。しかし、医療費は「価格×量」で決まります。価格引き上げの議論が進む一方で、量を絞る施策が導入される可能性もあります。急激な量の削減は、現場の病院にとって致命的です。新たな地域医療構想や診療報酬による集約化の動きも注視が必要です。
編集部
厚生労働省の方針に従うだけではダメだと?
神野会長
厚生労働省が提示する方針への「対応型」から、我々が主導する「提案型」への転換が必要です。2040年、2060年の医療ビジョンを、我々自身が描き、提示したいと思っています。現在、「病院のあり方報告書」の作成を若手経営者に委ねる準備を進めています。私が提唱する「健院」やエコシステムの概念を超える、革新的なアイデアが生まれることを期待しています。
編集部
今後の情報発信についてはどうお考えですか?
神野会長
国民向けのYouTube番組制作を検討しています。単なるテロップ付き動画ではなく、わかりやすく、親しみやすい内容にしたい。3分程度の短編を複数制作する予定です。医療界という「小さな池」の中だけで議論していても意味がない。この認識を強く持っています。国民に直接メッセージを届ける必要があるのです。
編集部まとめ
「病院をぶっ壊せ」。この衝撃的な言葉の背後には、30年の経営経験に裏打ちされた深い洞察と、医療の未来への強い危機感がありました。
1990年代の経営危機で「泥船」と罵られながらも、他業界の知恵を貪欲に吸収し、日本初の試みを次々と実現してきた神野会長。その革新的な取り組みは、PHSやクレジットカード決済の導入から、生成AIによる年間4000万円のコスト削減、スマートウォッチを活用した新サービスまで、常に時代の最先端を走り続けています。
医療界という「小さな池」から飛び出し、国民との直接対話を目指す姿勢も印象的でした。医療の未来は、医療者だけでなく、私たち国民一人ひとりが当事者として考え、行動すべき課題であることが、神野会長のインタビューから見えてきました。

