資金援助の危機 – 国際協力の転換点
アフリカのHIV対策は、国際的な資金援助に大きく依存しています。しかし、その持続可能性に疑問が投げかけられています。
「アメリカのPEPFAR(大統領エイズ救済緊急計画)やグローバルファンドなどの支援により、多くの命が救われました。しかし、援助疲れやほかの健康危機への関心のシフトにより、資金が減少する可能性があります」とコーネリッセン教授は警告します。
保富氏も懸念を示します。
「だからこそ、治療ワクチンのような根本的な解決策が必要なのです。一度の接種で長期間効果が持続すれば、継続的な薬の供給に頼る必要がなくなります」
2030年エイズ終結目標 – 達成への課題
UNAIDSは2030年までにエイズの流行を終結させる目標を掲げています。しかし、現状では達成が困難な状況で、古賀教授は以下のように説明しています。
「95-95-95ターゲット(感染者の95%が診断を受け、その95%が治療を受け、その95%でウイルスが抑制される)の達成状況は、2024年時点で87%-89%-93%です。地域によってはさらに低い数値です」
特に課題となっているのは、最初の「95」である診断へのアクセスです。
「検査を受けることへの恐怖、施設への距離、プライバシーへの懸念など、多くの障壁があります」
日本の貢献と責任 – 科学と連帯の力
宮田満氏は、シンポジウムの総括で日本の役割について言及しました。
「日本は優れた基礎研究力と技術力を持っています。しかし、その成果を世界、特に最も必要としているアフリカの人々に届けることができているでしょうか」
それに対して保富氏は、「私たちの研究は、日本だけのものではありません。世界のHIV感染者、特にアフリカの人々のためのものです。一日も早く臨床試験を開始し、実用化を目指します」と決意を語りました。
また、コーネリッセン教授は、希望を持って未来を語ります。
「HIV/AIDSとの闘いは、人類の連帯が試される挑戦です。科学の進歩、政策の改善、社会の変化、そして国際協力。これら全てが組み合わさったとき、私たちは勝利できるでしょう」
治療ワクチンの開発は、単なる技術的挑戦ではありません。「誰一人取り残さない」という理念を実現する挑戦なのです。
編集部まとめ
HIV/AIDSは、もはや一国だけで解決できる問題ではありません。日本が開発する治療ワクチンは、生涯服薬からの解放という革命的な可能性を秘めています。サルでの実験成功は、その実現が決して夢物語ではないことを示しています。
しかし、技術だけでは不十分です。アフリカの現実を理解し、現地の研究者や地域社会と協力し、文化的・社会的な課題にも取り組む必要があります。
2030年のエイズ終結目標まで、残された時間はわずかです。日本の技術力とアフリカの経験知を組み合わせることで、この人類共通の課題を克服できるかもしれません。
「エイズの脅威からアフリカを救う」という保富氏の言葉は、単なるスローガンではありません。それは、科学の力と国際連帯によって実現可能な、具体的な目標なのです。
私たち一人ひとりにできることは、この問題に関心を持ち続けること。そして、偏見や差別をなくし、全ての人が尊厳を持って生きられる社会を作ることではないでしょうか。
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