
N支店に勤めるリコさんはある荷物の集荷でご婦人宅を訪れていた。荷物の中身は「石」だという。ご婦人は少し話しづらそうに「登山でこれを持ち帰ってから不幸が立て続けに起こって…」と教えてくれた。不安になって寺に相談をしたところ、山の管理者に返した方がいいとアドバイスされ、石を送り返しているのだという。

この話を聞き、リコさんにも思い当たることがあった。それは、小学生のころの学校帰り道でのことだった。リコさんはある“もの”を拾ったことを思い出した。それは汚れているのに“とてもいいもの”に思えて仕方なかったのだという。一度は捨てられてもゴミ収集車を追いかけて取り戻すほどにそれに執着していたという。
本作を描いたのは現役郵便局員である送達ねこ(@jinjanosandou)さんだ。郵便局員が経験した不思議な話や怖い話を漫画化しているうちに、送達ねこさんの元には同僚たちから不思議な体験談や怪談が次々に舞い込んでくるようになった。今回の話もそのなかのひとつである。送達ねこさんに話を聞いてみた。

――本作を公開すると「私の父も、山深いところにある川から石を持って帰り、金縛りにあったと言ってました」「河原の石は絶対に拾って持って帰ってはいけない、って昔から言われていました」など、石に関して読者からの反響が大きかったですね。
はい。「石を拾うと、縁に傷がつくと言われました」という興味深いコメントもありました。「縁に傷がつけば、出会うべき人に出会えず、逆に出会ってはならない人に出会ってしまう」と…。たしかに「石には特別な力が宿っていて、持ち主に影響を及ぼす」という話を聞きます。お店で売られるようなパワーストーンは逆にいい意味で、望む縁を持ち主にもたらすといわれていますし、石に不思議な力をみとめるさまざまな言い伝えが世界中にあるようです。縁でつながる人によって人生も変わるでしょうから、たまたま拾った石で出会いが変わってしまうとしたら怖いですね。目にとまったモノに、ふと執着を感じて運命が変わる…奥深い神秘を感じます。
――幼少期のリコさんが何に執着して、何を拾ったのか気になります!
気になりますよね。自分も描く上で知りたくて聞いてみたのですが、伏せられました。災いの再演を今も怖れているから、とのことだそうです。

読者からの反響が大きかった本作。なぜか気になる、異様に執着してしまう…そんなものを山や川、道で見つけたときは絶対に拾って持って帰らないようにしよう。リコさんも最初は「とてもいいものに思えました」と言っている。“いいもの”に見えるものが、“いいもの”とは限らないのだから――。
送達ねこさんが描く『郵便屋が集めた奇談』は、読者から「こういう不思議で怖い話って好き」「けっこう背筋がゾクッとしたけど、めちゃくちゃおもしろい…!」と好評。日本のどこかの町でひっそりと起こっている“怪異”を覗き見してみよう。
取材協力:送達ねこ(@jinjanosandou)
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